山田洋次「おとうと」、チャーリー・パーカーに突入

 仕事は22時まで。もろもろクレームなどあり、けっこうへこむ。くそったれって感じです。
 昨日は休みで妻と立川へ。娘の入院時の診断書を病院に取りに行き、その後は小一時間別行動。僕はHMVの上にあるオリオン書房で、大塚英志東浩紀の対談本やらを買う。映画館前で待ち合わせをし、妻と再び合流。山田洋次「おとうと」を観る。いやーこれは山田洋次らしいいい映画だけど、ずばり地味だな。やはり吉永小百合が主役だった山田の前作「母べえ」は号泣だったが、そこまではいかなかった。山田にとっては久々の現代劇ということだが、たとえば「男はつらいよ」や「学校」に比べても、淡白というか、安易な情緒や感傷を排除しているというか、少ない描写・表現でいろんなものを伝えようというここ数年の山田の洗練された方向性がもっともはっきり出ている作品だなとも思った。繰り返すが、地味だけど。ただ、身寄りのない人たちを最後に看取る“民間ホスピス”みたいなそんな施設の存在をメジャー映画で徹底したリアリズムで描くなんてことは、この人ぐらいしかやらないだろうから、やっぱすごいな、と思う。尊敬する。
 ジャズの話に変わり、去年約1年間はコルトレーンのキャリアを追って順々に作品を聴いた。ようやくひととおり聴き終えたので、これからは何を聴くかなと考えていたが、ここ数日でようやく方針が固まって、今年はまずチャーリー・パーカーをがっつり聴くことにした。代表的なところは一応押さえてあるが、系統立てては聴いていない、パーカー。ときおり引っ張り出しては、「うわーやっぱパーカーすごいっす」(NHK「みいつけたぁ!」のコッシー風)と盛り上がるが、もっと深いところまでつっこんでいきたいなと思う。しばらくはそちらに潜ることになりそうで、ますます浮世離れしていく。
 ふと思ったが、35過ぎて日々の生活のなかで実際にちゃんと音と向き合える時間の量が限られてるなか、このペースで一年に一人か二人のジャズジャイアンツを追っていくということをやってれば、もう10年、20年なんてあっというまに経ってしまうんじゃないだろうか。まじに。一昨年はオーネット、去年はコルトレーン、今年はパーカー、じゃあ来年はエリントンで・・、メジャーどころを追ってるだけでも、聴くべきストックは無数にある。これはやばいのだろうか?という気もする。やばいよな、まあいいか。いまの自分の感性がリアルと思う方向に行くだけだから、それはそれでいいや。

雪、ニッポンの思想、ジャズベスト3、

 雪すごいっすねー。明日は休みで、娘を病院に連れてかなければならないんだが(元気なんだが肺炎退院後の定期受診)、足元にはかなり気をつけないといけない。
 新書の佐々木敦ニッポンの思想 (講談社現代新書)」を最近読んだ。半分以上書いてることが分かんなくて、ところどころ「オッ」と一瞬入り込んだが、トータルでは結局やはり何を言ってるか分からないという、自分の知的レベルの低さを痛感した一冊。80年代「ニューアカ」に関しては、柄谷行人浅田彰中沢新一も何言ってるのかほんとわかんなくて、だからポストモダンとか言われても感覚すらも分からない。ただ蓮實重彦の文章は惹かれるもの(けっこう好きかな)があったので、興味持った。90年代は、福田和也は何言ってるかわからないが、宮台真司はちょっと分かった、で、大塚英志はよく分かった。00年代の最強のプレイヤー東浩紀もやっぱよくわかんねー。思想ものに関しては、善し悪しという中身の吟味より好みでしか俺は読めないんだな、ということがよく分かった。佐々木敦は大学生のあいだでかなり影響力を持ってるらしいと、この前飲み屋で聞いてちょっと驚いた(佐々木さんって音楽ライターってしかイメージないから)のがきっかけで買った本だが、すごいな今の大学生と感心してしまった。

 話は変わり、2009年の私のベスト、ノートランクスHPで掲載されてます。僕のベストはこちらから↓
http://notrunks.jp/cdreview/2009best3/2009best_goto.htm

 マスター村上さんも含めた皆さんのベストはこちらから↓
http://notrunks.jp/cdreview/2009best3/2009bestmain.htm

 音楽に関してはここ数年ジャズしか聴く気がおきなくて、2009年は特にほんとそれだけだったなと思う。異常だなとは思うが、しょうがない。過去のものでも聴くものが無数にありすぎる。

 あ、あと、今週は土曜日に板橋文夫の還暦記念コンサート行ってきます。
http://www.musicbird.jp/itabashi/index.htm

2009年のベストなど

もう1月も終わりますが、今年もよろしくお願いいたします。
去年は年末に1歳の娘が肺炎で入院し、大みそかになんとか退院と、非常に慌ただしい年越しでした。

さて、今週の土曜1月30日に国立ノートランクスで、「ジャズ私のお気に入りベスト3」企画があります。19時から23時ぐらいまで。チャージは特になしで、飲食代のみ。

http://d.hatena.ne.jp/notrunksjp/20100127

私は当日仕事がありますが、早番なんで、開始時間からかけつけることと思います。
コメントなどは近日中にノートランクスHPに掲載されると思いますが、自分のベスト3(新録、再発&発掘音源)のタイトルだけ、ここに記しておきます。

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【2009年新録ベスト】

アーティスト/タイトル/レーベル

1位:松風鉱一/リンデンバウム・セッション/スタジオ・ウィー
2位:MICHAEL BLAKE & KRESTEN OSGOOD / CONTROL THIS / CLEAN FEED
3位:橋爪亮督,清野拓巳,浜村昌子, 萬恭隆 / NEEDFUL THINGS / GRAPES RECORDS


【2009年再発&発掘音源ベスト】

アーティスト/タイトル/レーベル

1位:山下洋輔 / ブリリアント・モーメンツ / ジャムライス
2位:JOHN COLTRANE / LAST PERFORMANCE AT NEW PORT / FREE FACTORY
3位:DENNY ZEITLIN / COLUMBIA STUDIO SESSIONS / MOSAIC

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1月30日(土)は皆さん、新年会気分で集まりましょう。

あと、いまのところつぶやきは少ないですが、twitter去年の末からはじめました。私のようなおっさんのつぶやきを見たところで、クソの役にも立たないとは思いますが。

https://twitter.com/toshiaki_goto

You Go To My Head

 「ジャズ新譜を聴く会」準備のために聴いていた、平井庸一のアルバム「マリオネット」のなかの一曲、スタンダード「You Go To My Head」。曲の後ろで平井のギターが不協和音的にあえて耳障りな感じで鳴り響く、実験的なバージョンだ。「マリオネット」のライナーによると、平井が敬愛するキング・クリムゾンの楽曲を意識してつくられたアレンジらしい。僕はクリムゾンはほとんど通過していないが、この曲に関してはかなり印象的だったので、他の人がやってる「You Go To My Head」はどんなものか、自分のipodの中だけだが、新譜大会の準備そっちのけでチェックし始めてしまった。
 まず、平井グループの元ネタ、トリスターノとコニッツ・バージョンはそれぞれ「鬼才トリスターノ」と「サブコンシャス・リー」でやってるやつを聴いた。特に後者のバージョンのストイックさはやたらかっこよく、一音一音を追ってそこから耳が離れなくなる。 
 コニッツも参加していた時期のスタン・ケントン・オーケストラ「ニュー・コンセプツ・オブ・アーティストリー・イン・リズム」(1952年)のバージョンは、平井バージョンに雰囲気がかなり近い、不穏でプログレチックなアレンジ。極めて白人的ともいえるビッグバンド音楽だが、インパクトは一番。一度腰を据えて聴きたいなあと思ってるのだが、スタン・ケントンはやっぱすげえな。
 スタン・ゲッツが「ルースト・セッション」でやってるのも歌いまくっていて盛り上がったが、圧倒的だったのが、ブルーノートバド・パウエル「アメージング・バド・パウエルl Vol 1」1949年の録音。3分強のバージョンなんだが、なんだろうかこの濃密さ。月並み過ぎるいいかただが、ここでのパウエルは形式にまったく陥っていない。ギリギリの音というか、とにかく美しい。60年前の録音だが、いま聴いてもこんだけ刺激を感じるというのは、ほんとなんなんだろうか。
 こういうのをやってるとずっとジャズを聴いてられる感じがする。

今週土曜! ジャズ新譜試聴会セットリスト

■お知らせ

今年最後のジャズ新譜試聴会 いよいよ今週土曜です!
日時:12月19日(土)午後7時スタート
会場:国立ノートランクス
会費:チャージなし 通常の飲食代
http://notrunks.jp/

ご紹介するのは、基本、今年の10月から12月にかけて出たジャズの新譜になります。

今回はいつにもまして日本人のが多いのと、いつもの感じのニューヨーク系と、などなど、いろいろ集めたところすべて新録で、全17タイトルとなりました。

●こんな感じでかけます↓紹介予定の新譜

1.JOHN HOLLENBECK/Eternal Interlude
2.Tyshawn Sorey/Koan
3.DJ SPOOKY / THE SECRET SONG
4.今岡友美/ディア
5.JON IRABAGON / I Don't Hear Nothin' But The Blues
6.林栄一/遊侠一匹
7.KURT ROSENWINKEL / REFLECTIONS
8.平井庸一/マリオネット
9.BEN ALLISON / THINK FREE
10.山田晃路/ア・ミリオン・サンクス
11.JOE MARTIN / NOT BY CHANCE
12.JP BALCAZAR / INVOCATION
13.SERGI SIRVENT/KARION
14.石田幹雄/知床
15.高橋クニユキ/ウォーキング・イン・ザ・ネイキッド・シティ
16.松風鉱一/リンデンバウム・セッション
17.佐藤允彦渡辺貞夫・日野皓正・峰厚介山下洋輔/マイ・ワンダフル・ライフ(富樫雅彦バラード・コレクション)


師走でなにかとお忙しいかとは思いますが、ぜひともお待ちいたしております。お気軽にどうぞ。

アスファルトだけじゃない、コンクリートだけじゃない

 ★仕事は22時まで。風邪は今日になってかなり回復。昨日などは鼻が異常に詰まり、匂いもものの味もまったく分からなく「このまま俺鼻がきかないで生きていくてとしたらどうなるのだ?」と深刻に思う一方、「食欲もぜんぜんないなーこれは痩せるなー」などとも考えながら、2リットルのペットボトルのお茶をひたすら飲んでいた。結局鼻は今日の昼飯ぐらいから復調。
 ★今日昼休みにミュージックマガジンの最新号を読んでて「あれ“じゃずじゃ”ないなー」と思って、休載のお知らせなども特になかったから、「もしかして」と思って、職場にあった先月号を確認したら、なんと先月で連載終了していたのだった、ということを知る。その最後の号の原稿でラパポート氏がけっこうミュージックマガジンに対してガチなことを書いてて、しかも編集長による最終ページの編集後記では、いっさい「じゃずじゃ」終了のこと(長いあいだ続いた名物連載なのに)触れていないという、このなんとも不穏というか奇妙な感じ。個人的にはマガジンからどんどんわけのわからなさというか奥の深さが削られていってしまっているなと感じる象徴的な出来事でもある。いや、そもそも連載終了に気づくのが遅すぎだろ自分、ってのがここでは一番につっこむべきとこなのだが。
 ★下北沢の老舗のジャズ喫茶「マサコ」が、今年9月で閉店していたということも一昨日ぐらいに知った。一回しか行ったことなく(一昨年に)偉そうなことは言えないけど、正調ジャズ喫茶とはちょっと違う感じだけど、そんなのは関係なく、すごく雰囲気のある、そして地元の人に愛されてるのが伝わる良いお店だっただけに、閉店はさびしい。そういえばマサコで日本猿飼ってんだよなー、外の商店街を犬みたいに散歩させてるのも見たことがあった。どうなったのかなあの猿は。
 ★僕の地元・多摩センター唯一といっていいCDショップである、駅構内にある「タハラ」が年内で閉店する。これはショックでかかった。タハラの品揃えがどうであるかは別としても、多摩センター住んでる人には音楽はやはり必要とされてないんだろうかと空しくなった。隣にあるパチスロ屋には朝の開店前から毎日人がたくさん並んでるのに、あほらし。地方の若い人とかもう特に興味ないんだろうな、CDとかわざわざ買ったりすることとか、それを聴くまでにワクワクしたりすることとか。
 ★と、暗くなることばかり書いたが、地方(と言っていいかな)の若い人中心の主催イベント、国立パワージャズ(11/8)は最高でした。屋台も出てたしよかった。皆さんお疲れ様でした。もうほんとに毎年毎年やってほしい。今年は板橋文夫の渡良瀬聴けた。泣けた。やはり名曲中の名曲。林栄一が3部とも登場の大活躍。本人はギャラは一部分だけだけどと、ぼやいていたが。
 ★今週11月20日(金)夜は国立ノートランクスでの酒井泰三(g)のサドルレス観に行きます。おもしろい音楽をやるバンドです。音楽雑誌とか大手CDショップでは登場しなくても、こういうかっこいいバンドはちょっといるんだぜ日本にも、と言っておきたい。また泰三氏の動画貼っときます。結局、興奮や感動は、健康に生きて、街に出て、自分でさがしていくしかない。
  
  

11月になった

 今週の日曜11月8日、いよいよ開催です。国立パワージャズ2009。3年目で、この時期の国立の名物イベントにもうなりつつあると言ってもいいかもしれない。そして、個人的には今回はもっともベストなバランスの人選だなーと思う。非常に楽しみ。もちろん開催場所は、一橋大学の兼松講堂です。

→ http://powerjazz2009.web.fc2.com/



 もう11月だ。先月ついに35歳になって、まあそれはそれでどうでもいいというか、年とることは避けられないことだから仕方がないことなのだが、それよりも最近の一般の人のネットの状況というか、たとえばツイッターとかミクシーアプリとか、なにがなんだか分からんってなってるのがやばいな自分、と切実に思う。というよりは、そういうのをやろうかなと思った瞬間にすぐにやめたくなってしまう、新しいものへのこの関心のなさはなんだろうか。いま時間があるとき聴いてるのはジョン・コルトレーン、あとは政治の本とかしか読んでいない。
 春ぐらいから、ずっとキャリアを追って聴いてきたコルトレーンも、ついに残すところ数枚というところになってきた。ちょっと寂しくもあるが、そんなことを言ってられないぐらいコルトレーンの走る勢いは凄まじい。いまは1965年の、ファラオ・サンダースがノイズをまき散らす「ライヴ・イン・シアトル」、「メディテーションズ」、そして「オム」、その辺を聴きはじめている最中だ。特にファラオの凶暴な金切り系フリークトーンが耳と体に痛くて、やはりエルヴィン&マッコイ&ギャリソン&コルトレーンの黄金カルテットの情熱的で美しい音が懐かしくなってしまったりもするのだが、それでも、コルトレーンのテナーの音色・響き自体は、たとえば「メディテーションズ」を聴けば非常に分かるように、急激に深みを帯びているのが感じられ、感動してしまう。65年のカルテット崩壊〜新バンド結成までのときのコルトレーン自身の変化をたどると興味深く、「サン・シップ」や「ファースト・メディテーションズ」をスタジオで録音しながら(この2作でのコルトレーンは必要以上に粗い)、自分がフリーキーになりすぎて吹いても音楽として限界がある、おもしろくないということで、そっち担当としてファラオを恒常的に従えることになったんだろうなとは、聴いてる限り容易に推測できる。サウンドの厚みは格段にアップしたが、ファラオの音はけっこう今の耳で聴くときっついなーとも思う。
 それにしても、今更こんなこと言ってるのも間抜けだが、「至上の愛」(64年12月録音)って何度聴いてもくる。すばらしくかっこよい。なんか「音楽とは関係ないところで評価されている『名盤』の代表」みたいに下手したらネガティヴにとらえられがちな「名盤」なのだが、実際に余計な左右からの先入観を抜きに聴くと、音の塊に心が打ち抜かれる。ここがコルトレーン黄金カルテットにとっての境、「至上の愛」以降、コルトレーンがフリーに傾倒していくのも、ものすごく分かるというか、カルテットとしてのやりきった感が「至上〜」にはすごく刻まれている。