皆さんはブルース・スプリングスティーンが好きでしょうか?その2

 1974年生まれの自分が音楽に目覚めたきっかけはご他聞に漏れず、リアルタイムで中学生時に聴いたザ・ブルーハーツである。中2のときにレンタルCD屋で借りてテープ(ハイポジだったかメタルだったか)にダビングして死ぬほど聴いて、歌詞も全部覚えたブルーハーツの美しい名曲の数々は、36のおっさんになった今でもいまだ自分の強固な基礎になっている。

 ブルーハーツヒロトマーシーの偉いところは、雑誌のインタビューの時やラジオ出演時などのメディアにおいて、自分たちが影響を受けたロックやブルースやソウルなどのミュージシャンについて頻繁に語っていたところで、ネットのない時代の田舎(山形県米沢市)の中学生にはそれは非常にありがたかった、というよりは、「これを聴けばヒロトマーシーみたいにかっこよくなれるんだろうなー」というアホな理由で、彼らの口から出るバンドやミュージシャンは意識的にかたっぱしから聴こうと思った。ストーンズもクラッシュもフーもビートルズピストルズも、リトル・リチャードも友部正人オーティス・レディングマディ・ウォーターズハウリン・ウルフも、ヒロトマーシーがいなければ中学生の自分はまず聴かなかっただろう。

 甲本ヒロトが人生で最も感動したライヴはスプリングスティーンの85年の来日公演だったと知ったのは最近(参照→http://ameblo.jp/high-hopes/entry-10730931780.html)。そしてやはりヒロトがアルバム「ボーン・トゥー・ラン」がフェイバリット・アルバムってこともいつだったか言ってたよなーとは思うが、当時の自分は見落としていたのだろう、あるいはもしかしたらそれほどヒロトマーシーも当時意外に語っていなかったのか、90年前後の時期、自分がブルース・スプリングスティーンを聴くきっかけには直接的にはブルーハーツは関わっていない。僕がスプリングスティーンを初めて聴いたのは、1990年、高校生のときNHK-FMラジオでかかっていた特集を偶然聴いてのこと。たしかロック偉人伝的シリーズみたいな内容の、つっこんだ解説もない、まあさほど力が入っていない適当な内容の番組だった。しかし、「LIVE1975-1985」からのピアノ伴奏での「サンダーロード」。これにめちゃくちゃやられた。なんだこの声、ヴォーカルの存在感。もちろん詩の意味など聴き取れるわけはないが、楽曲からドバドバ溢れてくるこの熱情的でセンチメンタルな圧倒的なエネルギー。驚き、心を打たれた。そこから「ボーン・トゥー・ラン」を買い、ビデオ「THE VIDEO 1978-88」での「ロザリータ」「リバー」「サンダーロード」3発をくらい、しばらくは、スプリングスティーン漬けとなる。


 その流れで、リアルタイムで初めて接したスプリングスティーンの新作となると、92年の双子アルバム「ヒューマン・タッチ」と「ラッキー・タウン」になる。先日、部屋の掃除をしてたら出てきた92年当時のスプリングスティーンをたっぷり観れるビデオ「LIVE IN PLUGGED」を久々に鑑賞してたら、思ってた以上に新鮮で内容が良くて相当盛り上がって見入ってしまったが、当時の感覚で言えば件の双子アルバムは正直地味だった、1992年の日本の高校生には、まわりでグランジだなんだと言って盛り上がってる時代の高校生には。

 そんなわけで、スプリングスティーンの音楽には本当にものすごく多大な影響を受けながらも、同時代としては不完全燃焼の感を持った状態で、徐々にスプリングスティーンから自分は離れていった。いやーいま思えば97年の「ゴースト・オブ・トム・ジョード」来日ライヴはなんで行ってなかったんだろうな、アホだなーと悔やむところではあるのだが、まあしかたがない。(続く)