グリセリン・クイーン、石田幹雄カルテット・ライヴ

 クロマニヨンズの新譜が今月出る。Youtubeで見たら、シングルの「グリセリン・クイーン」アップされていて、これがめちゃくちゃよい。マーシーっぽい曲だよなー。で、本屋で最新のインタビュー読んでたら、マーシーが「いまのヒロトのヴォーカルは彼のキャリア史上一番いい、吹っ切れた」と断言してたが、たしかにそんな感じもする。


 話は変わり、先日、本厚木のキャビンという店に、石田幹雄カルテットを聴きに行った。 
メンバーは、石田(p),太田朱美(fl),吉田隆一(bs),早川徹(b)。若手から中堅のリアルな曲者勢ぞろいで、しかもドラムレスという編成、これに食指が動かないわけがない。個々での共演はあるものの、この4人での組み合わせによる演奏は初とのこと。
 前半はすべて石田のオリジナル曲、後半はそれに、各メンバーのオリジナルが1曲ずつ加わる。こういったかたちでの石田が主導のグループのライヴをたっぷり聴くのは、すごく久々だ。いつ以来だろうか?このまえ7月に行った札幌ではタイミングを逃しほとんど聴けなかったし、1年ぐらいさかのぼっても、ソロピアノやサイドでの参加ライヴは観たが、リーダーでのグループ演奏となると、相当僕は観てない。石田幹雄が北海道から関東に出てきてもう1年半、そこで日々上り詰めていく過程を見逃しているのはほんともったいないよなーと思っている。
 と、くどくどこんな書くのは、言うまでもなくこの日の演奏、特に「時間があったから最近つくっていて」と石田本人が語っていたオリジナルが非常に非常にすばらしかったからだ。ここからは思いっきり主観で語らせてもらえれば、モンクとかハービー・ニコルスとかアンドリュー・ヒルとか、ジャズの強力変態系の系譜に新たに石田幹雄ははっきり名を連ねたと言っていいと、この日僕は確信した。もちろん石田の曲にはそれだけではないもっとセンチメンタルなものや現代的なものもあってそれもいいのだが、ジャズの血をもっとも濃く受け継いでいるラインの音楽性を見事に血肉化したといっていい、数曲の躍動感と創造性が突出していたのだ(タイトル忘れたが、たしか「終わらない物語」とかそうだったかな?レコーディングされてるものはないと思う)。
 これがこのノリがジャズだよな、と聴いていてなんか思った。優れた他ジャンルの音楽と比較するためにジャズからなにかひとつ提示しなければいけないとしたら、モンクやヒルの、ジャズの核心を突くこの前のめり感とバネのあるスウィング感の不可思議な調和、黒さ的なものを、僕はまっさきに挙げると思う。石田のこの日の楽曲、そして彼の“ここぞ”と思われるところでガツンと鍵盤を打ちならす大きなフレージング、そこにはまちがいなくその黒さ的なものがあった。無条件にかっこいい。そしてこういうタイプの音楽をやってるジャズミュージシャンというのは今それほどいない。(ジェイソン・モランが素晴らしいのもそこだ。)その個性的な曲と彼のピアノに正面から対峙し、ひけをとらない太田のフルートと吉田のバリサクもすごい。複雑な曲のノリを殺さずビートとしてキープする早川もすごい。というか、4人がその大きなグルーヴに燃えながら突入しているのが伝わってきて、すごくすごく興奮した。

先週末のライヴとイベントの感想

 9月11日(金)

 仕事は早番で19時過ぎにあがる。国立に電車で向かい、20時前に到着。約1か月ぶり、前回は板橋文夫のソロを聴いた国立ノートランクスで、今日は松風鉱一&小森慶子の双頭クインテットのライヴを観に。メンバーは、松風(ts,as,fl),小森(as,ss,cl),清水くるみ(p),吉野弘志(b),藤井信雄(ds)。
 もともとは、松風・吉野・藤井のおやじトリオが前身だったこのユニット。そこに小森が加わり、さらに清水が加わり、クインテット編成に落ち着いたらしい。2〜3年前、やはりこの店で最初のおやじトリオを観たことがあるが、ジャズのサックストリオの旨味がたっぷりと詰まった素晴らしい演奏だった記憶がある。そこにさらに2人が加わり、どんなことになってるのか?非常に期待を持って臨む。

 演奏が始まってすぐに、ああこれはよいバンドだと確信した。5人の相性がとてもよいのだろうな、それぞれの音がいい具合に融合している。核となるおやじ3人のジャズは、吉野のベースと藤井のドラムがつくり出す粘り気のあるグルーヴ、松風の自在なリードが巧みにからみ、やわらかくも芯の強い塊がややゆったりめのスピードでスウィングしていきながら、じわじわとこちらの耳をとらえ、最後はどっぷりはまらせるという非常にストイックな様相。ピアノともう一人のリード奏者が加わることで厚味と強度が増して、そのサウンドの骨格がもっとストレートに伝わるようになった。粘り気のあるグルーヴを途切れさせないこと、音の進む方向を正しく聴き取りながら緩急を自然なかたちでつけていくこと、そして主に松風作による楽曲の世界観を生かすこと、5人がそういったところを非常に意識しながら演奏してるのがとても感じられる。こういうバンドはほんとに好きだ。ジャズって感じがする。ジャズのグルーヴ、ジャズの黒さ、ジャズの自由さがある。

 全体のサウンドの波にのまれながら、個々の演奏の細部にも同時に耳がぴったり貼りついてしまうという、よいバンドを聴くときに聴き手に起きる現象が、この日の自分にはずっと続いていた。

 9月12日(土)

 1歳の娘と絵本読んだり、ウンチをしたおむつ換えたり、寝かせたりしながら、またいつものようにジャズ新譜の会資料をドタバタでつくるが、この日なんだかパソコンの調子がおかしくて、エクセルもワードもすぐにかたまる。プリンターつかおうとしてもかたまる。やばい。そんなこちらのてんぱった状態とか関係なく、娘はアンパンマンとか、いないいないばあのビデオを見せろとか要求してくるので、それに対応したりなだめすかしたりで準備がまずい状況。奥さんが昼過ぎに仕事から帰ってきても、パソコンは復旧しない。しかたがないので、会場のノートランクスでブログでアップした内容を印刷させてもらうことに。

 ジャズの新譜会の前に、ノートランクスを借りて、id:feelieさんと恒例の(っても2回目だが)、さしで音楽を聴く会。feelieさんはティム・バックリー、自分は昔聴いてたテクノのもろもろを持参。ちなみに前回は、fさんはじゃがたら、自分は友部正人。ティム・バックリーは初めて聴いたが、ほんと声がよい。曲もよい。CDを貸していただくことに。テクノは久々に聴いたがエイフェックス・ツイン(ポリゴン・ウィンドウ名義)とベーシック・チャンネルはやっぱきてるなあ、すごいなと思った。

 ジャズ新譜会は、毎回だが前半と後半に分かれる。あいだの休憩でお客様が持参されたものをかけていただくというスタイル。(プレイリストは9/12の日記をご参照ください。)

 反応はそれほどではなく感じたが、前半では個人的にはオーネットの59年音源が一番ジャズって感じました。まあ新譜(新録)では思いっきりないわけだが。この新譜会で自分は毎回いまのニューヨークの人たちのをかける率が高い。そのあたりはもちろん好きだからってのもあるが、それ以上に現在進行のリアルなジャズってなったとき、まっさきに思い浮かぶのがそのへんだからかけている。でもなんだろうか、前半の最後、オーネット・コールマンのアルト聴いた瞬間に、ああジャズ聴いてるなとしみじみ思ったのだ。なんか変な感覚だ。クリス・ポッターや、ベン・モンダーやカート・ローゼンウィンケルやマーク・ターナーやナシート・ウェイツ、ジェイソン・モラン、ロバート・グラスパーブラッド・メルドーを聴いて、「そうだこれが今のジャズだ!」と一方では盛り上がっているのに、昔のオーネットを聴いて「ああジャズ聴いてるな」と実感してしまう矛盾した心持ち。後半の古澤良治郎を聴いたときも、同じようにやはり「ああジャズだなあ」って思った。
 なんだろうか、これは。前日の松風クインテットを生で聴いたときにあらためてわき起こったジャズについての自身の感覚の再構築といったら大袈裟すぎるが。ただ、ナシート・ウェイツのアルバムでのジェイソン・モランのピアノを聴いてるときは、どちらにもいける「ジャズ」の感覚があるかなとも思ったりもした。

 まあいろんなものを聴いて行くしかないのだ、結局。

 後半の山場は、ラストの板橋文夫2連発。ひとつが「オーディオ・ベーシック」という雑誌の付録CD、もうひとつがライヴ会場限定発売のDVD。どちらも通常のCDショップで買えない。で、どちらもピアノソロ。映像はずるいかもしれないが、板橋さんの演奏はやはり見入ってしまうなー。いろんな出演者が参加するライヴのイベントで「結局、板橋さんが全部持ってちゃったねー」みたいなシチュエーションが、この日のジャズ新譜会でも起きてしまったというか。「渡良瀬」、「上を向いて歩こう」、「グッドバイ」と続けて観たが、心がぐらぐら動きっぱなしだった。板橋文夫よいなー。

 というわけで参加いただいた方、ノートランクス村上さん、皆さんありがとうございます。次は12月になります!

試聴会プレイリスト

ジャズの新譜を試聴する会 2009年 秋   選:後藤


本日9/12(土)国立ノートランクスにて19時よりスタートです。

会費等は特にありません。飲食代のみです。ぜひお気軽にご参加ください!!!※お薦めのジャズ新譜(ここ3か月ぐらいでのリリース)がありましたら、ぜひご持参ください。


↓↓本日のプレイリストです↓↓


(●ARTIST / TAITLE / LABEL / 参加メンバー)


高柳昌行 / THE COMPLETE WORKS OF JOJO : JAZZ 1 / JINYA (DVD)

高柳昌行(g) 井野信義(b) ※1990年live


●CHRIS POTTER / ULTRAHANG / ARTISTSHARE

CHRIS POTTER(ts), ADAM ROGERS(g), CRAIG TABORN(el-p), NATE SMITH(ds)


●SEAN WAYLAND /PISTACHIO / SEAN WAYLAND

SEAN WAYLAND(p,key)m KEITH CARLOCK(ds), TIM LEFEBVRE(b), ADAM ROGERS(g), JAMES MULLER(g), MATT CLOHESY(b)

●SOREN MOLLER / A TRIBUTE TO TRANE / AUDIAL RECORDS

SOREN MOLLER(p), MORTEN RANSBOEL(b), FREDRIK KRONKVIST(sax), ANTONIO SANCHEZ(ds)


●JAMAALADEEN TACUMA / COLTRANE CONFIGURATIONS / JAZZWERKSTATT

JAMAALADEEN TACUMA(b), TONY KOFI(as,ss), ORRIN EVANS(key), TIM HUTSON(ds,boom boom)


●ROBERT GLASPER / DOUBLE BOOKED / BLUENOTE

ROBERT GLASPER(p,el-p), CHRIS DAVE(ds)M2-6, VICENTE ARCHER(b)M7-12, CASEY BENJAMIN(sax,vocoder), DERRICK HODGE(el-b), BILAL(vo:M11,12), MOS DEF(vo:M7), JAHI SUNDANCE(turntables:M12)


●TONY MALABY / PALOMA RECIO / NEW WORLD

TONY MALABY(ts), BEN MONDER(g), EIVIND OPSVIK(b), NASHEET WAITS(ds)

●NASHEET WAITS / EQUALITY / FRESH SOUND NEW TALENT

LOGAN RICHARDSON(as), JASON MORAN(p), TARUS MATEEN(b), NASHEET WAITS(ds)


●JOE HENRY / BLOOD FROM STARS / ANTI

JOE HENRY(vo,g),JAY BELLEROSE(ds),KEEFS CIANCIA(key),LEVON HENRY(sax),DAVID PILTCH(b),MARC RIBOT(g),PATRICK WARREN(p),JENNIFER CONDOS(b),MARK HATCH(flugelhorn),MARC ANTHONY THOMPSON(vo) GUEST:JASON MORAN(p)


ORNETTE COLEMAN/DON CHERRY/JIMMY GIUFFRE/KENNY DORHAM 他/ THE LENOX SCHOOL CONCERT AUGUST 29, 1959 / FREE FACTORY

Ornette Coleman(as),Don Cherry(tp),Kenny Dorham(tp),Al Kiger(t),Jimmy Giuffre(sax),Ian Underwood(fl),David Baker(tb),Gunther Schuller(frh),Gary McFarland(vib),Attila Zoller(g),Steve Kuhn(p),Ran Blake(p)and more
※1959年録音


山下洋輔 / ブリリアント・モーメンツ / ジャムライス

山下洋輔(p),森山威男(ds),坂田明(as),中村誠一(ts),小山彰太(ds),林栄一(as),武田和命(ts),国仲勝男(b)

※山下歴代トリオ70年代未発表音源


緑川英徳 / YOU MUST BELIEVE IN SPRING / MOCK HILL RECORDS

緑川英徳(as), 中牟礼貞則(g), 俵山昌之(b), 江藤良人(ds)


大西順子 / 楽興の時 / EMI

大西順子(p), REGINALD VEAL(b),HERLIN RILEY(ds)


古澤良治郎 / ユー・ウォナ・レイン / ユニバーサル

古澤良治郎(ds),向井滋春(tb),高橋知己(ts),望月英明(b),大徳俊幸(p,el-p)

※75年


松倉如子 / パンパラハラッパ / P-VINE

松倉如子(vo),渡辺勝(g,p..),船戸博史(b),高田正則(ds),松田幸一(harm),渋谷毅(p),村上律(g..) 他


板橋文夫 / 板橋文夫流ジャズピアノ/ ※オーディオ・ベーシック付録

板橋文夫 / NORTH WIND / ※ライヴ会場限定販売 (DVD)

板橋文夫(p)

ジャズの新譜を聴く会

いろいろと書きたいことはたくさんある毎日なのですが、とり急ぎ、今週の土曜日のお知らせです。恒例のイベントです。ほんとに気軽にふらーっと飲みに来る感覚でおいでください。あるいは肩に力をいれて、ジャズの新譜なんておもしろいのかー?なんて感じでいらしていただいてもよいかと思います。

【告知】

ジャズ新譜を試聴する会 2009年 第3回
日時:9月12日(土)19時〜23時ぐらい
場所:国立ノートランクス http://notrunks.jp/
チャージ:特になし 通常の飲食代のみ

基本、今年の7月〜9月にかけて発売されたジャズの新譜を紹介いたします。DJは私です。アメリカ・ヨーロッパ・日本の現在進行系のジャズを中心に(ジャズ周辺も)、再発や復刻もの、あと映像も紹介いたします。お気軽においでください!

★今回かける予定の音源(アーティスト/タイトル 順不同)

・Nasheet Waits / Tough Love
・Chris Potter / Ultrahang
・Tony Malaby / Paloma Recio
・Robert Glasper / Double Booked
・Sean Wayland / Pistachio
・James Carter / Heaven On Earth
・Soren Moller / A Tribute To Trane
・Jamaaladeen Tacuma / Coltrane Configurations
Ornette Coleman 他 / The Lenox Jazz School Concert
大西順子 / 楽興の時
緑川英徳 / You Must Believe In Spring
古澤良治郎 / ユー・ウォナ・レイン
山下洋輔 / ブリリアント・モーメンツ
板橋文夫 / North Wind (DVD)
高柳昌行 / JAZZ 1(DVD)
・Joe Henry / Blood From Stars
松倉如子 / パンパラハラッパ

明日から札幌

 明日、娘と嫁さんを家に置いて札幌に行ってきます。サマーばんけいジャズフェスティバル2009を観るため。
→ http://www.sapporo-jazz.jp/
 中央線ジャズの主要どころが勢ぞろいという濃いブッキングだけでも、これは良い雰囲気のジャズフェスに違いないと確信を持てる。札幌には11時前に到着予定だから、最初に出演の石田幹雄になんとか間に合いたい。
 最近は、休日に立川の映画館で「ザ・レスラー」を見た(これは深い、というか、つくってる人の優しく誠実な視点が嘘っぽくなく共感できた映画)とか、先週日比谷の野音での山下洋輔トリオ復活祭(これはどうだろう、すんません、正直に言えば共感できないところもちょっとあったかもしれない)を観たとか、いろいろ書きたいことはあるものの、家帰って酒飲んで寝てしまう。休みの日も昼間寝て、夜は子供と遊んで、あとは酒飲んで寝てしまう。
 音楽は相変わらずジョン・コルトレーンをずっと追って聴いている。ようやく、エルヴィン・ジョーンズ(ds)、マッコイ・タイナー(p)、ジミー・ギャリソン(b)との黄金カルテット期に突入したのが6月の中旬ぐらいで、そこからズブズブと1か月その辺の音源を聴いている。まだ「至上の愛」にも行ってなくて、今週ずっと聴いてたのはパブロ6枚組の「ライヴ・トレーン」。いやとにかく、やってるのが「Impressions」、「My Favorite Things」、「Naima」、「I want to Talk About you」ばっかりなんで、そればっか聴いてんだけど、うわーもういいかげんきっついなあと思った矢先に、突然背筋がピン!としてしまうような激熱の凄まじい演奏がとびだしてきたりするから堪らない。これはもう体と脳の奥の奥までしっかり染み付くまで聴き倒すしかない、黄金カルテット最高。
 そして最初の話に強引に戻れば、この札幌でのサマーばんけいジャズフェスには、おそらくそんなコルトレーン的熱さがたっぷり味わえるのではという予感がプンプンに漂っていて、テンションが上がってきてしまう。では朝早いんで寝ます。

油井正一とタモリのラジオ

【告知】
ジャズ新譜を試聴する会 2009年 第2回
日時:6月20日(土)19時〜23時ぐらい
場所:国立ノートランクス http://notrunks.jp/
今年の4月〜6月にかけて発売されたジャズの新譜を紹介いたします。DJは私です。アメリカ・ヨーロッパ・日本の現在進行系のジャズを中心に、再発や復刻ものもご紹介いたします。お気軽においでください!


6月3日(水) 曇り

 休み。今日は保育園を休んでいる娘が午前寝から起きてきた後、妻と3人でモノレールに乗って立川まで。昭和記念公園まで行って、昼飯や散歩など。娘はずいぶんと一人で歩くようになって、公園の土のところを転ぶのを恐れずドシドシ歩き、それを見ながら親二人で盛り上がる。

 家帰ってネットやってたら、こんなのを見つけた。↓


 81年の音源らしい。2000年代以降にジャズファンになった自分は恥ずかしながら油井さんが話すのって初めて聞いたのだが、予想以上に軽妙というか明るいというか、コミュニケーションの能力が高そうで、すごくユーモアがあってバイタリティーがありそうな人という感じで、“重鎮”という印象とはまた違う。名著「ジャズの歴史物語」やライナーで読める重厚で冷静な文章とはギャップがあって軽い驚きがあった。ジャズに目覚めた辺りのくだりや、「ジャズを一生の仕事にするとは思わなかった」とか、淀川長治のこととか、「ブルース・ブラザーズはいい!」とか、短い時間ながらも刺激的な内容が語られていてとてもおもしろい。
 昔の油井さんのラジオの音源とかなんらかのかたちで聴きたいなと思う。どなたかなんとかならないでしょうか!?
 2006年に油井さんの母校・慶応大学で開かれた資料展について自分が書いてる文章です(明田川荘之黒いオルフェ”のレヴュー)。↓

http://notrunks.jp/cdreview/2006best3/2006best_goto.htm

今日のライヴ、5月の記録

 昨夜は職場は23時30分頃出る。雨は半端じゃなかった。1時過ぎに家帰ってきたら玄関のドアを開ける音に気付いたのだろうか、寝室で寝ていた娘がちょうどワーと泣き出す。外で濡れた服もそのままに抱っこをしてミルクを与えてようやく静まった(というか妻が静めてくれた)ので夕飯。と、そこで初めて気づいたのだが、駅から家に帰る途中にあるセブンイレブンで買ったはずのビールなどが袋に入っていない。紙パックのお茶だけしか入っていない。レジのときにちょっとバタバタしたのと、帰り道はこの大雨だから無我夢中で歩いてきて気付かなかったが、店員が入れ忘れたのかな、おそらく。数百円ではあるが無性に悔しいというか腹が立ち、ひとりで夜中愚痴る。

 今日は休み。夜は国立ノートランクスで酒井泰三のサドルレス(酒井泰三(g)吉崎守(b)湊雅史(ds)を聴きに行きます。ライヴ録音のCD−Rは買えるだろうか。また以前貼った動画を貼っときます。このサウンド、大好きです。
 


以下は5月のもろもろの記録。

5月9日(土)

 日中は娘と妻と3人で過ごす。昼飯を食べに15分ほどかけて歩いて野猿街道のラーメン屋「ポパイ」まで。外は異様に暑い。醤油ラーメンと焼肉丼のセットを食べたら汗がダラダラ出る。娘がワーワー言い出したので、急いで食べ終え店を出る。
 19時からスタートの国立ノートランクスでの「ジャズバーで米国ルーツ寄り音楽を聴く夕べ」にちょっと遅刻して参加。DJはいつもお世話になってるid:feelieさん。
 表題だけだと何のこっちゃかも分からない。というか、実際に参加して満喫しといたにも関わらず自分もいまだ客観的な説明をできないのだが(基本知識不足で)、大雑把すぎる印象と感覚で言えば、“現在進行形のアメリカのインディーの尖がったカントリー・シーンの紹介”とでも言えるだろうか。なんか書いた瞬間にイメージをダサくしてしまってfeelie氏にはすんませんだが、かっこいい音楽を発見することができたイベントだったということはほんと特筆します。序盤に紹介された日本のジャズファンにも名は通ってるメロディー・ガルドーとかマデリン・ペルーはとりたててピンとくるものが自分にはなかったものの(悪かねえけど買うまではいかない)、中盤以降の初めて名前を聞くアーティスト、特にREDBIRD、JOLIE HOLLAND、THE GOURDS、LAMBCHOPなどにはグッと耳を引き寄せられた。ルーツ寄りなものよりは、パンクが根っこに感じられるのがやはりおもしろいなー自分は。単に紹介されていないだけでいい音楽・シーンはあるんだということを、feelie氏から頂いたJOLIE HOLLANDの最新作CDを後日自宅で聴いたときに、ジーンときながら実感してしまったのだった。

 イベント終了後に、その日告別式(青山ロックンロールショー)のあった忌野清志郎さんの追悼ということで、マスターの村上さんがCDをかけ、来店していたお客みんなで聴く。
 一曲目の「わかってもらえるさ」がよくて泣きたくなってしまった。山形のど田舎に住んでいた20年近く前、RCのCDを聴きながら甲州街道だとか国立だとか、そういった訪れたこともない土地について妄想したものだが、その清志郎の地元である国立で彼が亡くなってしまったという現実を受け止めながら、残されたソウルフルで切なくて愛おしい彼の曲を聴く、そんな日が来るとは。翌日ネットで観て聞いたヒロトの弔辞にも泣いてしまったし、他のいろんな人が書いたり喋ったりする清志郎への思いを見ても、失ったものの大きさ・何か取り返しのつかなさといったものをあらためて痛感する。

5月11日(月)

 feelie氏と渋谷の北の家族で飲み。自分の仕事が終わるのが遅くなりずいぶん待っていただいた。話したのは音楽話だが、俺が「結局、ロックがだめになったのは渋谷陽一のせいなんですよ、ロッキンオンが悪いんですよー」とか意味不明なことを叫びだしたあたりで終了。

5月18日(月)

 仕事は早番で7時前ぐらいに終え、そのまま国立へ。ノートランクスにライヴを聴きに。自分は久々に聴く“独断場”シリーズ、この日の出演は小森慶子(as,cl)とゲストに山口コーイチ(p)。この日はじめてじっくり聴いた小森のクラリネットもサックスも、すごくブルースを感じるというか、ブレない芯の強さと黒光りを携えた音だなと思った。おそらく小森の嗜好だと思われるカーラ・ブレイチャーリー・ヘイデンの選曲が、彼女の目指すジャズというのを端的にあらわしているのかもしれないが、昔渋さ知らズ(小森は年末で脱退したそうだ)で聴いた彼女の音のイメージとだいぶ違っていて、個人的に新鮮だった。内省的というか内に探求していくというか。テーマをなかなか吹かないスタンダードALL THE THINGS YOU AREのひねり方がまたおもしろかった。

5月27日(水)

 娘がだいぶ歩けるようになってきた。こちらが食事をしているときたいがい娘はこちらに近寄ってきて邪魔をするのだが、この日の夜はまったくこっちに見向きもせず(この日は妻の誕生日だったのだが)、歩く練習に夢中で、一人で立っては歩き転び、また立って歩きということを繰り返していた。
 日中は立川まで出る。この日入荷していた村上春樹の新作を買った(新作出ることまったく知らなかった)。