グリセリン・クイーン、石田幹雄カルテット・ライヴ

 クロマニヨンズの新譜が今月出る。Youtubeで見たら、シングルの「グリセリン・クイーン」アップされていて、これがめちゃくちゃよい。マーシーっぽい曲だよなー。で、本屋で最新のインタビュー読んでたら、マーシーが「いまのヒロトのヴォーカルは彼のキャリア史上一番いい、吹っ切れた」と断言してたが、たしかにそんな感じもする。


 話は変わり、先日、本厚木のキャビンという店に、石田幹雄カルテットを聴きに行った。 
メンバーは、石田(p),太田朱美(fl),吉田隆一(bs),早川徹(b)。若手から中堅のリアルな曲者勢ぞろいで、しかもドラムレスという編成、これに食指が動かないわけがない。個々での共演はあるものの、この4人での組み合わせによる演奏は初とのこと。
 前半はすべて石田のオリジナル曲、後半はそれに、各メンバーのオリジナルが1曲ずつ加わる。こういったかたちでの石田が主導のグループのライヴをたっぷり聴くのは、すごく久々だ。いつ以来だろうか?このまえ7月に行った札幌ではタイミングを逃しほとんど聴けなかったし、1年ぐらいさかのぼっても、ソロピアノやサイドでの参加ライヴは観たが、リーダーでのグループ演奏となると、相当僕は観てない。石田幹雄が北海道から関東に出てきてもう1年半、そこで日々上り詰めていく過程を見逃しているのはほんともったいないよなーと思っている。
 と、くどくどこんな書くのは、言うまでもなくこの日の演奏、特に「時間があったから最近つくっていて」と石田本人が語っていたオリジナルが非常に非常にすばらしかったからだ。ここからは思いっきり主観で語らせてもらえれば、モンクとかハービー・ニコルスとかアンドリュー・ヒルとか、ジャズの強力変態系の系譜に新たに石田幹雄ははっきり名を連ねたと言っていいと、この日僕は確信した。もちろん石田の曲にはそれだけではないもっとセンチメンタルなものや現代的なものもあってそれもいいのだが、ジャズの血をもっとも濃く受け継いでいるラインの音楽性を見事に血肉化したといっていい、数曲の躍動感と創造性が突出していたのだ(タイトル忘れたが、たしか「終わらない物語」とかそうだったかな?レコーディングされてるものはないと思う)。
 これがこのノリがジャズだよな、と聴いていてなんか思った。優れた他ジャンルの音楽と比較するためにジャズからなにかひとつ提示しなければいけないとしたら、モンクやヒルの、ジャズの核心を突くこの前のめり感とバネのあるスウィング感の不可思議な調和、黒さ的なものを、僕はまっさきに挙げると思う。石田のこの日の楽曲、そして彼の“ここぞ”と思われるところでガツンと鍵盤を打ちならす大きなフレージング、そこにはまちがいなくその黒さ的なものがあった。無条件にかっこいい。そしてこういうタイプの音楽をやってるジャズミュージシャンというのは今それほどいない。(ジェイソン・モランが素晴らしいのもそこだ。)その個性的な曲と彼のピアノに正面から対峙し、ひけをとらない太田のフルートと吉田のバリサクもすごい。複雑な曲のノリを殺さずビートとしてキープする早川もすごい。というか、4人がその大きなグルーヴに燃えながら突入しているのが伝わってきて、すごくすごく興奮した。