You Go To My Head

 「ジャズ新譜を聴く会」準備のために聴いていた、平井庸一のアルバム「マリオネット」のなかの一曲、スタンダード「You Go To My Head」。曲の後ろで平井のギターが不協和音的にあえて耳障りな感じで鳴り響く、実験的なバージョンだ。「マリオネット」のライナーによると、平井が敬愛するキング・クリムゾンの楽曲を意識してつくられたアレンジらしい。僕はクリムゾンはほとんど通過していないが、この曲に関してはかなり印象的だったので、他の人がやってる「You Go To My Head」はどんなものか、自分のipodの中だけだが、新譜大会の準備そっちのけでチェックし始めてしまった。
 まず、平井グループの元ネタ、トリスターノとコニッツ・バージョンはそれぞれ「鬼才トリスターノ」と「サブコンシャス・リー」でやってるやつを聴いた。特に後者のバージョンのストイックさはやたらかっこよく、一音一音を追ってそこから耳が離れなくなる。 
 コニッツも参加していた時期のスタン・ケントン・オーケストラ「ニュー・コンセプツ・オブ・アーティストリー・イン・リズム」(1952年)のバージョンは、平井バージョンに雰囲気がかなり近い、不穏でプログレチックなアレンジ。極めて白人的ともいえるビッグバンド音楽だが、インパクトは一番。一度腰を据えて聴きたいなあと思ってるのだが、スタン・ケントンはやっぱすげえな。
 スタン・ゲッツが「ルースト・セッション」でやってるのも歌いまくっていて盛り上がったが、圧倒的だったのが、ブルーノートバド・パウエル「アメージング・バド・パウエルl Vol 1」1949年の録音。3分強のバージョンなんだが、なんだろうかこの濃密さ。月並み過ぎるいいかただが、ここでのパウエルは形式にまったく陥っていない。ギリギリの音というか、とにかく美しい。60年前の録音だが、いま聴いてもこんだけ刺激を感じるというのは、ほんとなんなんだろうか。
 こういうのをやってるとずっとジャズを聴いてられる感じがする。