ということで、この前の日記の続き。
 酒井泰三プロデュース「快楽事件」。一番手は古澤良治郎のバンド「ね。」。中央線ジャズ古老・古澤の異形なポップの世界がもう文脈関係なく爆発。テナーとアルトの2管、ドラム、エレベ、パーカッション、そして酒井泰三のギター。ジャズ、ファンク、レゲエ、アフリカ、ロック、歌謡曲などなどの要素がグルングルンにかき混ぜられグルーヴをかたちづくる。まずそもそもこのグループでは古澤はほとんどドラムを叩かず、シンセを弾いて歌って踊ったりしてるのだからそれだけで最高だ。ステージ・客席の中でも最もハイテンションなのが60歳の古澤というのも、素晴らしい。
 いやあ楽しいなと手に持っていたビールを飲み干し、次のビールを買いに行こうとフラフラッと店の後方のカウンターに向かったら、そこにはサックスの林栄一が立っていて、ジーッとステージを見つめている。「ね。」の次に登場するバンドは、酒井泰三がここ2年もっとも力を入れているといっていい3355。そのユニットに今回は林が初参加するという。
 この3355with林栄一という組み合わせのニュースを知ったとき、個人的にはもう「よっしゃ、きた!」という感じだった。自分が酒井と林のファンだからということはもちろんあるが、3355に林のアルトが加わることで、このグループの音のエッジの立ち方の度合いがググッと数段階あがり、それと同時に、いい意味で分かりやすい方向性が生まれてくるのではないかと瞬間的に思ったのだ。
 タンテのDJ高田、ドラム・藤掛正隆、ベース・ナスノミツル、ギターの酒井、そして中央に林と、メンバーが揃い演奏が始まる。というか音が鳴り出した瞬間でもう勝負が決まった。「へへ、すげえな・・」と思わず俺はにやけてしまった。爆音と高速で旋回する骨太なグルーヴ、林と酒井の音の美しさにもほんとうっとりしてしまう。そしてうっとりしながら、踊り狂ってしまう。
 ともすればお祭り騒ぎに終始してしまいがちなロックとフリージャズの妥協的融合とはまったくかけ離れた、生きた音。比較することには意味がないが、例えばジェームス・ブラッド・ウルマーやデヴィッド・マレイが失速して見失ってしまった音の魔力がここにはある。あとあれだな、この3355を聴いたら、オーネット来日コンサートとか聴かなくていいかもなと真剣に思ってしまう(一瞬)。
 40分ぐらいで終わってしまった演奏に、フロアからも「もっとやれ」という雰囲気。残念ながら、タイムスケジュール上それは難しいらしく、終了。
 最後は、エレクトリック・ノマド。酒井(g)・太田恵資(vl)・佐藤研二(b)・佐野康夫(ds)というメンバー。3355に較べると、勢いという点では若干テンションが下がるが、安定感はさすが。3355を動かしているものがたぎるような初期衝動だとしたら、エレクトリック・ノマドの場合は円熟や妙とかそういう方向にシフトしてるのかも、そんなことも思った。
 あっというまに過ぎた濃い充実した3時間。国立に着いたときには、雨はすっかりやんでいた。