そういう意味で、今日国立のノートランクスで聴いた勝井祐二の音楽は自分の好みとはだいぶ離れたところに存在しているようにも一見思える。
 前半・後半それぞれ45分程度のソロ。ヴァイオリンの生音はあまりない、サンプラーエフェクターなどエレクトリックな機材を駆使するアンビエント音響派的世界。店内には電子音が反響する。後で気付いたが、アンプスピーカーがステージと反対の位置にもう一台設置されていた。
 本人がMCで「即興です」とは言っていたが、そこから生まれるスリルや緊張感は希薄だったりもする。いわゆるインプロと言っても、例えば大友良英なんかとは逆のベクトル。あるいは“チャーリー・パーカーインプロヴィゼーションの極み”といった世界とも勝井氏の音楽は全く無縁。エレクトロニカ的な柔らかい音の選び方そして安定した調性感が効果的な、和みや落ち着きを聴き手の感覚にもたらす音楽。
 思ってた以上に好きかも、と思った。