で、前日は、自分と同じ30歳前後のジャズミュージシャンの演奏を国立ノートランクスで聴いた。江藤良人(ds)と和泉聡志(g)のデュオだ。
 二人は、A.T.M.という4人組のグループのメンバー。しかしMCによるとこの組み合わせでのデュオは初めてとのこと。
 ロック色が強い雑食系のバンドというA.T.M.の音楽性をデュオとして再現したファーストセットは、正直言って物足りなかった。「ロックっぽい音」「歌謡曲っぽい音」みたいな具合にイメージを限定してしまうことで、逆に演奏者の表現範囲が狭められているような気がした。
 雑食や折衷は大好きだが、そこに表現として突き抜けているものがないとやはり刺激がない、たとえ技術があっても。
 そんないかにも正論めいたことを考えながら迎えたセカンドセット。ギターがスタンダード「ラウンド・ミッドナイト」のテーマを短く奏でる。そこからの展開が、良かった。
 特に和泉聡志が俄然違う。ジャズの曲だったから、あるいはジャズの奏法で弾いていたから良かったのだ、というわけでは当然ながらない。なんというか、和泉が表現者としての本音をこの曲でちゃんと曝け出していたような気がして、そこが胸に届いたのだ。おざなりのフレーズがまったく出てこない。それに呼応する江藤良人のドラム(この人の音の安定感と冒険心と懐の深さは、相変わらず惚れ惚れする)がもっとも生き生きしたのも、このときではなかったかと思う。