と、どうでもいいことを書いてるが、関内に来た目的はライヴを聴くため。ストーミーマンデイでの酒井泰三セッション。メンバーは、酒井泰三(g)・今堀恒雄(g)・ナスノミツル(b)・佐野康夫(ds)。ナスノさんも佐野さんももちろん泰三レギュラーバンドのメンバーではあるのだが、アングルとしては、現・今堀トリオVS酒井泰三というふうにとれないこともない。ガチンコ、来るか?それとも意外にリラックスしたジャム・セッションになるのか?期待が高まる。
 8時10分過ぎ。4人がステージに並び、演奏が始まった。セッション的探り感が希薄な、いきなり全開の爆音。正しい。この4人にまどろっこしいソロまわしなんかは必要ない。まず沸点まで昇りつめること、攻防はそこからだ。いやあ、それにしてもこのリズム隊は、ちょっと凄すぎて表現に困る。ビートが刻まれるとかっていうやわなもんじゃなく、叩き弾き出されたいくつもの音がいろんなかたちをしながらものすごい高速で回転しているようだ。相当な個性である2人のギタリストには最もふさわしい、凄まじいリズム隊。
 さて、ターンテーブリストヒューマンビートボックスなど様々な「異質」と対峙し、繋がり、音楽世界を深めているここ最近の酒井泰三だが、同じ楽器ではありながらも今掘さんのギターは泰三さんにとっては(あるいはタンテ以上に)これまた相当な「異質」なのではないかと思う。技術的なことは門外漢の自分にはなにも言えないが、聴いた感覚として2人のギターの音の感触・空気はそれぞれかなり違う。
 思いっきり抽象的・観念的に書き連ねるが、今日の今堀さんのギターを聴いて僕がイメージした言葉は、「硬」、「ロジック」、「断絶」だ。一方、泰三さんのギターは「揺らぎ」、「間(ま)」、「混じりあい」。グルーヴへの奉仕ということで言えば、おそらく2人ともそれを第一義にしているミュージシャンなのだと思うが、アプローチはまったくと言っていいほど違う。
 当然どちらも、やばいギターであることは間違いない。しかしそのやばさのベクトルが違うというか。この日の演奏でもそのベクトルの交差する瞬間がものすごくスリリングであり、また興味深かった。
 まさにこの4人の組み合わせだからこそという、重くそして尖がった異形のファンクネスが展開されたセカンド・セットは、ほんとに素晴らしかった。