この日のライヴは、三上寛のグループ・KAJUZZ(カグズ)。メンバーは三上寛(Vo.g)、鈴木常吉(acc)、広沢リマ哲(ts)。
 CDで音をずいぶん前に聴いたことはあったが、ライヴでは初めて触れる三上寛セミアコをかき鳴らし、がなるような叫ぶような、とにかくドスの効いたボーカルを聴かせる三上。洗練さ皆無の、ブルースだ。怒りと怨念、悲しみへの慟哭。そんな感情が無様にむき出しにさらけ出されている。
 ぶっちゃけた話、演奏された曲はほとんどが同じに聴こえた。しかしそれらが繰り返されるうちに、ステージと客席がなんだか浄化されていくような、そんな不思議な感覚さえおぼえた。
 特筆したいのが、2ステージでそれぞれ1曲ずつぐらい演奏された、ささやくように歌われる優しく甘い旋律を持った楽曲。暗黒の中で垣間見える、僅かでささやかな光。あるいは、常に世界に対して怒り苛立つ人間がふと見せる感傷とでも言ったらいいだろうか?僕はこういうのにとにかく弱い。だから、少し泣きそうになった。