この夜の演奏は、松風鉱一グループ。メンバーは、松風(sax)、加藤崇之(g)、水谷浩章(b)、外山明(ds)。ライヴレコーディングも行なわれていた。
 ノートラに着いてまず驚いたのが、お客さんの多さだった。なんと人数制限が出るほどの超満員状態。格闘技見てる場合じゃなかったよ!
 さてこのバンド、僕は3回目の体験だが、相変わらずツボに入る音楽だ。カラフルでなんとも不思議な味わい深い雰囲気を持った音像は、おそらくジャズファン以外にもすごく届く音だと思う。
 店主の村上さんはこのバンドを語るにあたって、60年代後半のチャールズ・ロイド・カルテットを例に出していた。なるほど通ずるものある。60年代ブルーノート新主流派には足りない猥雑で自由な雰囲気・エネルギーが、ロイド・カルテットにはあって、そしてそれと同じ感触がこの松風グループにも感じられる。それがこの日よく分かった。
 例えば、加藤さんのギター。飛び道具系・変態系とも言えるいろんな音色のエフェクトでひたすら中心から遠くに行こうとする音。かなりの毒があるといってもいいだろう。しかしグループのサウンドはそれを突き抜けさせず、あるいは突き放さず、柔らかく音の中に包み込む。その何とも言えないバランスや空気や、月並みな言い方でいえばスウィングしている感覚がすごく自由なのだ。俺、これ好きです。
 特にこの日でいえば2セットめ1曲目での、リズム隊がつくるゆるやかでファンキーなビートに、フロント2人の味のあるソロが絡んだときのその美しさは本当に刺激的だった。泣きとクールなファンクネスの奇妙な同居というか。これはつまり、松風さんの長年培ってきた柔軟なセンスなんだろう。すごくおもしろい。CD楽しみ。