紀伊国屋を出て、餃子の王将で夕飯を食べ、その後はピットインへ。
今夜はトランペット吉田哲治のグループ、爆裂ロマンストリオのステージ。僕にとっては、昨年の夏に国立NO TRUNKSでFORE−2のライブを聴いて以来の吉田氏の生演奏体験だ。そしてFORE以外の吉田氏のグループの演奏を聴くのはライブでもCDでも初めて。どんな感じなのかなとちょっと興味があった。
FOREにも参加している湊雅史さんがドラムを叩き、ベースはナーダムなどでお馴染みの伊藤啓太氏、そしてリーダーの吉田氏というのがこのトリオのパーソネル。さらにこの日はゲストとしてピアノの小林洋子さんとギターの佐藤さん(?)が加わった。
それにしても爆裂ロマンストリオというのもなんともなネーミングだ。ピットインのスケジュール表においてもあきらかに浮いている「爆裂ロマンス」という字面。しかしこのグループの音楽性を端的にあらわしていなくもない。この日の演奏を聴いてそれをすごく感じた。
具体的に言えば、楽曲の骨格となる吉田氏が書きそして吹くシンプルなメロディラインにそれはあらわれていると思う。まっすぐに感傷的なメロディ。しかし感傷は感傷でも、ここにあるのはハードボイルドな「男の感傷」とでもいうべきものだ。ルパン3世でいう「孤独な笑みを夕陽にかざして背中で泣いてる男の美学」というやつ。これは言うまでもなく、ギャグだ。「ロマンスが爆裂する」と、グループ名をギャグにしてるのと同じように、このグループの楽曲コンセプトそのものがギャグなのだ。ギャグという言葉が適切でないとすれば、単純化した感情をあえて演じることをコンセプトにしているとでも言えるだろうか。
そしてそのストイックなコンセプトを突き詰めることで見えてくるジャズの本質があるのだということを吉田氏はきっと確信している。実際、小林洋子さんのほんとに素晴らしいピアノが響いたブルースを客席で聴きながら興奮した僕は、幸運なことに吉田氏の追求する音楽の本質にちょっと触れることができたんだろうと思う。