さて、今夜の林栄一(as)のソロライブはインプロヴィゼーションの巣窟荻窪グッドマンにて8時過ぎから始まった。考えてみると僕はこの1年、ナーダムやデュオやその他さまざまなグループで彼の演奏を聴いているが、ソロは初めて。店内には15人ほどのお客さんが集まっていて開始の時点でもう席は埋め尽くされていた。
薄暗いライトが当てられたステージで2セットに分かれての林栄一の独奏には何か神々しいまでのオーラが漂っていた。これを聴いて観た後にいったい何を語れるのか。今まで自分が聴いた林氏の演奏の中でもまちがいなく最高のものだった。押しつぶされたハードなトーンが美しいノイズに変化していく様に自分の感覚もいつのまにか同化する。やがてそのノイズが拡散され不穏と混沌が空間を埋めたとき、鋭く強い生命力を持ったフレーズが吹かれ、その空気を一気に凝縮する。単純な劇的なカタルシスとは違うジャズの神秘というかインプロヴィゼーションの魔力というか、とにかくアルト一本にこれだけ引きつけられるという経験はそうそうできるものではない。
10時半ごろ終演して、中央線に乗って国立駅に着いて、そこからの帰り道のコンビニでゴルゴ13立ち読みしながらだとか家帰ってきてビール飲みながら新日本プロレス(IWGPトーナメント。佐々木健介やっぱいいな)とか「BSマンガ夜話」(題目は高野文子るきさん」。めちゃくちゃおもしろかった)の再放送とか見てたりしたら表面上は忘れていたように思えた。しかし、それらから離れて横になってボーっとしてたらはっきりと聴こえてくるではないか、数時間前のアルトソロが。耳の奥の方と脳の記憶を司る部分にがっちりと焼きついた林栄一の世界。これが自分におよぼす影響は、今後すごく大きいかもしれない。