起きてシャワーを浴びて、外に出る。アケタの店にライブを観に。ソボブキというグループのライヴ。リーダーが西尾賢(p)で、今日は7人編成。松本健一がテナーで参加していた。僕は初めてこのグループを聴く。このグループの象徴ともいえるパーカッションの藤ノ木の訥々としたボーカルも入ったオリジナルを前半・後半で全8曲演奏していたのだが、なかなか独特な世界だった。
1セットめはエリントン楽団のポール・なんとかという人に捧げた「PAGO」という曲から始まり、「アメリカザリガニ」、「佃島の夜明け」、最後が「たぬき」というなんか脱力したタイトル曲ばかり。印象的だったのが、ヴィブラは生で聴かんと良さが分からないのだなと確信させられた初山博氏のその演奏。響きが違う、本当に。3曲目でのブルースハープではないクロマチックハーモニカでの彼の爽やかで優しいメロディも新鮮だった。
2セットめ一発目は、「亀楽」という西尾氏曰く「亀有に伝わる捏造の伝統音楽」を披露。小唄(?)とかそういう影響の濃い楽曲でここで西尾氏は三味線を弾く。終盤の松本氏のブルブル震えながら徐々に盛り上がるテナーはめちゃくちゃ聴き応えがあった。アイラーなんかにも通じる力強く聴き手の心を一気に持っていく初期衝動的なブロウだ。続いて「ほやの夢」。そしてタイトル忘れたがハーモニカがフューチャリングされた曲が演奏され、ハーモニカもよかったけど、ここでは伴田氏のソプラノの激情がかなりの聴かせどころだった。伴田氏はテナーをメインにときおりソプラノという具合だったが、そのテナーは松本氏に比較するとクールな感が強く、好対照とも言えるような。最後は「伊藤啓太」という曲。伊藤啓太ってこのグループのベースの人だ。この曲もそうだが彼も熱かった。昨年末に林栄一ナーダムで観た以来だが、切羽詰ってやってる緊張感がなんかすごく伝わってくる、この人からは。
ソボブキの演奏は全体的にはマッタリ色も強いのだが、小気味よくだらだらしてない。それはドラムの千光士氏の力が大きいのかもしれない。僕はジャズのドラムはまだよく分からないところが非常にあるんだが、このドラムは聴き手を飽きさせないのですごく好きだ。ラスト「伊藤啓太」では爆発していた西尾氏のピアノだが、基本は粋な雰囲気。ちなみに「ソボブキ」というグループ名の語源は「素朴で不器用」ということらしい。もうひとつちなみに西尾氏の弟さんは、西尾拓美という西村知美の夫のあの人らしい。まあそれはいいとして、今日のライヴによって自分の音楽の聴き方の幅は広がっていくだろうなと思う。ジャズの楽しみ方のひとつを新たに学ぶことができたというか。とにかく行ってよかった。