変わるスピードが 違ったんだなあ

 音楽について大雑把にいえば、先月はジョン・コルトレーンを聴いて、今月はオーネット・コールマンを聴いて、という感じだろうか。と言っても、ひたすらコルトレーンとオーネットを聴きこんでいたというわけでは決してなく、それぞれの数枚のアルバムを、それぞれ集中して何日間か聴いていたというだけだ、実際には。しかしながらも印象としては、「最近何聴いていた?」と問われれば、コルトレーンとオーネットですねー、と即答するだろう。まあこういう答えをした時点で、いろんな意味でいろんな角度から会話がそこでストップしてしまうのは間違いないわけだが、別にそんなことは関係ない。やっぱりなんだかんだいってもperfumeは認めないわけにはいかないね、とか言えばいいのだろうか、うるせえわ。
 いや、もちろんコルトレーンとオーネットだけではない。海外・国内ジャズの新譜にもたくさんいいのがあった(関連した内容を後述)。寝返りをうちはじめた4ヶ月の娘と腰痛の妻を妻の実家の両親にお願いして、聴きにいかせてもらった数本のライヴも、素晴らしいのが多かった。テンプテーションズスティービー・ワンダーの70年代初期の作品群を聴いていまさらながらそのかっこよさに興奮して、サザンの30周年活動休止ライヴのダイジェストをたまたまテレビで酒飲みながら観てやっぱ初期のころのは名曲多いよなー、というかその時期だけなんだろうないいのはと思ったり、あとはちょっと前のBSマンガ夜話で見て刺激を受けたのがきっかけでこれもいまさらながら「ハチミツとクローバー」全巻を一気に読み切って(スピッツが好きな自分にはハチクロの青春もせつなくてよかったが、これは子供ができたからだろう、最終巻の寄せ集めの短編でのドラえもんの秘密道具「暗記パン」を題材にした漫画が本当に泣けた。この漫画家凄い。)、山田洋次ファンならぜったいにマストである「母べえ」DVD初回盤を買って本編にも特典にも涙して(「男はつらいよ」が40周年ということでいま各種メディアで地味に盛り上がってます!見逃せない)、伊坂幸太郎ゴールデンスランバー」や小島和宏「ぼくの週プロ奮戦記」、紙プロ「生前追悼ターザン山本!」も、「論座」の最終号も読んだ。
 話は戻って、コルトレーンとオーネットに関してだが、コルトレーンは自分にとっては「行き詰ったらコルトレーンを聴く」みたいな、ほとんど宗教的なところに位置しているのかもしれない。それは、大江健三郎だったか村上春樹が年に一回ドストエフスキーのたしか「カラマーゾフの兄弟」を読んで精力をつけるという行為と、同じ感覚ではないかと勝手に思っている。コルトレーンの音を浴びてただ放心状態になり浄化されるという行為。エルヴィン、マッコイ、ギャリソンとのカルテット後期とそれ以降の怒涛の晩年。
 オーネットは、70年代以降中心。「サイエンス・フィクション」、「ダンシング・イン・ユア・ヘッド」、「ボディ・メタ」、「ヴァージン・ビューティ」、をあらためてじっくり聴いた。教科書的にいえばオーネット=フリージャズ創始者なのだが、音としてリアルに体感すれば、いまの時代の一般的イメージとしてあるフリーの語法とは根本で鳴り方がちがってると思った。超然としていて素朴で、型にはまらない新鮮さが常にある。それが言葉でなく実感で感じられた。自分は意外にというか、オーネットはいままでスルーしてたんだなと今回正直認識した。(一昨年の来日公演は、それでもおもしろくなかったが。)以前、林栄一が「コルトレーンは素晴らしいよ、もちろん。でもオーネットってのは、あれはちょっと特別なんだよなあ。」というニュアンスのことを(たしか)つぶやいていたのも頭をかすめる。

 というわけで、

 9月27日(土)、恒例ジャズ新譜試聴会です!
 国立ノートランクスにて19時半ごろより。今回は、いつものように世間的にいえばマイナーな輸入盤ももちろんかけますが、日本人ジャズ、そしてDVDもがっつりとりあげていく予定です。ぜひともお待ちしております!!

http://notrunks.jp/