今月に入ってグッときたもの

 旧譜と新譜に関係なく、今月に入って聴いてグッときたものをいま思いつく限り書くと、(1)フィル・ウッズの「Woods Notes」、(2)リトル・ウォルターの「1953-1955」(レーベル:CLASSICS)、(3)la Cantor「Mother Nebula」(4)エルヴィン・ジョーンズ「Dear John C.」、(5)Al Casey「Jumpin' With Al」の数曲、(6)コルトレーンの仏アンティーブ祭65年の未発表映像(DVD)、(7)ライヴでは7月12日国立ノートランクスでの奥野義典カルテット、そんな具合である。(2)以外はジャズであり、この暑苦しい毎日の最中にいかがなものかというぐらい、汗の流れを加速させる音楽だ。我ながら幅が狭いというか、暑い夏に涼しげな音楽を・・なんて粋な心持ちがないのがうざったいな自分、とも思う。
 1969年のヨーロピアン・リズム・マシーンとの衝動・情動全開のヒリヒリした演奏がもうパンクを聴いてるみたいに解放感を与えてくれるライヴ音源(1)や、53年〜55年のリトル・ウォルターの生々しくも神々しい艶とエグさを持ったブルース・ハープの音(2)、エルヴィンとリチャード・デイビスの絡み合いの細部細部にグルーヴの魔術を感じ取れそれに聴き入ることで日常とは違うスイッチが頭の中に入ってしまう(4)、そして、一心不乱に吹き続けるコルトレーンに圧倒されながら最後は完全に屈服・浄化させられてしまう(6)・・・と、子持ちの33歳のおっさんが何を毎日興奮してるんだという話ではあるが、いまだ多感な日々で充実しています。それと、同じギターものではあるが、時代も傾向も違う(3)(5)。(3)ブルックリン生まれのILA CANTOR嬢は現代ジャズギターの流儀を身につけながらも、ときおり何かが切れたようにあらぬ方向に思いっきりハードコアに暴走してしまったりという、ジャズではあるが、思わずNYの長見順と形容したくなる男気あふれる前のめりなギターを聴かせてくれ(2007年作品)、(5)73年のAL CASEYについては京都のジャズ喫茶の方のブログに共感いたします→(http://murralp.exblog.jp/#al_c)。
 (7)の奥野カルテット→奥野(as)石田幹雄(p) 瀬尾高志(b)竹村一哲(ds)の音の佇まいには、上述の69年のフィル・ウッズ&ヨーロピアン・リズム・マシーンと同様の質とベクトルを感じた。奥野の曲もアルトも魅力的であり、石田・瀬尾・竹村のトリオの躍動的なグルーヴも胸をすく。そしてなによりも彼ら4人のサウンドから滲み出てくる叙情がたまらなくよかった。
 昔のBSマンガ夜話永島慎二漫画家残酷物語」の回をYOUTUBEで見て熱くなった。