ピート・タウンゼントのサイコデリリクト

 仕事は22時過ぎまで。
 昨日は休みだったが、その前日は思いっきり働いて終電とかで帰ってきたから、昼過ぎまでだらだら寝てしまって、ハクション大魔王暴れん坊将軍も見ることができなかった。これはまずいな何かしなければと思って、よし外出しようかと考えたものの、出かけると言っても観たいライヴがなければあとはCD屋とか本屋とか飯屋ぐらいにしかどうせ行くところはないし、そうするとまだ買ったけど聴いてないCDや読んでない本がたくさんあるのだからそちらを優先させるべきであり、飯だって家の冷蔵庫にいろいろとあったから、結局は嫁さんが夜に帰ってくるまで家にいようという結論に達する。多少中途半端な時間、ネットをやりながらDVDでも適当に観るかと部屋の自室のテーブルに散らばったもののなかから、「うわ、こんなのあったのか」っていうDVDを抜き出した。ピート・タウンゼントピート・タウンゼント・ライヴ~サイコデリリクト [DVD]」。これは去年の年末に、近所の多摩センター駅のタハラっていうCD屋で買ったんだよな、たしか。

 当然ながらリアルタイムではないものの、ザ・フーは本当に大好きで、特にタウンゼントは好きなミュージシャンベスト上位ランキングに常に入る。ヒロトマーシー、タウンゼント、板橋文夫友部正人酒井泰三林栄一、オリン・エヴァンス、セルジ・シルヴェント、ローガン・リチャードソン、ナシート・ウェイツ、ジェイソン・モラン、石田幹雄、マーク・キャリー、外山明原田依幸、J-DILLA、アンドリュー・ヒル、今日現在の好きなミュージシャンをいま思いついた限りに挙げるとそうなるだろうか、自分以外にとってはどうでもいいことだが。
 タウンゼントのDVDに話を戻すと、これはちょっと凄いです。ネットやりながらなんて全然見れなかった。1995年のニューヨークでのライヴ映像、その時期に出たタウンゼント・ソロアルバム「サイコデリリクト」の実演ライヴ。タウンゼントがもう観念的に突っ走りすぎて、誰もついてきてないよ!ってのがヒシヒシと伝わりながらも、圧倒的に釘付けになってしまう!この感動が通じる人って、いったいどれぐらいいるのだろう?
 「サイコデリリクト」は60年代末のフーの「トミー」から続くタウンゼントのいわゆるロックオペラ路線にあるアルバム。このライヴは、実際にステージに俳優が出てきてセリフも喋って演技もして、それに合わせてタウンゼントのバンドが演奏する力技的内容。俳優っていってもダルダルなおっさんとおばさんたち計3人だけだし、一応ストーリーがあるのだけど、それだってフーやタウンゼントファン以外はまったく入りにくい内容なのだろうな、きっと、っていう独特さがある。オーウェルの「1984」の世界、個の内面までも支配する完全な管理社会・体制との闘い、ちょっとパッと見で「ああわかったわかった」という、手塚治虫とかも好みそうなふた昔前の設定。その管理社会に対抗する、大衆を目覚めさせる・解放するロックンロールというカルチャーに可能性を信じるダメダメなロートル・ロックミュージシャンのおっさんが主人公の話。あきらかにタウンゼント自身がモデル。
 なんかこれらの説明では意味不明だとは思いますが、でも感性の鋭い方ならなにかしらこの異様な熱気とタウンゼントの演奏というか動きとか表情に魅せられるはずなんで、ぜひ見てほしいです、ほんものです。ラストにこの主人公が、というより実質タウンゼントがゆっくりつぶやく次の言葉がグッときすぎる。
「真実はどこへ行ってしまったのだろう?夢はどこへ行ってしまったのだろう?あの素晴らしきヒッピーはどこへ行ってしまったのだろう?」。
 明日早いので寝ます。