台風、先週のnoituloveというイベント

 職場を出たのが23時過ぎ。台風の影響で電車が遅れていたため、最寄の駅に着いたのは0時半近く。駅のホームで雨を避けるために小走りで階段に向かう途中、思いっきり滑ってこけた。自宅に行くまでのほんの5〜6分のあいだでも腰から下がずぶ濡れになってしまうものすごい降りっぷり。
 話は変わり、先週の金曜は、渋谷のライヴハウスO-NESTで開催されたnoituloveというイベントに行った。渋谷は年に2〜3回行くのがいいとこなので、会場にはかなり当てずっぽうで歩き向かったが無事到着して、19時の開演に間に合う。イベントは5組の出演で、ノンポリラジカル、ドラびでお、ESSENTIAL 、nemo、ELECTRIC NOMADという演奏順。
 最終的には23時過ぎに終了だったから、約4時間という自分のようなおっさんにとっては長丁場のステージ。だがもちろん全てしっかり付き合う。
 最初の2組は両者とも、ラップトップ経由で映像を駆使したパフォーマンス。ノンポリラジカルの方は演奏も完全にパソコン一台。音の軽さはやはりいかんともしがたいとしても、ハードコアパンクとそれに合わせためまぐるしく混沌とした映像が生み出すスピード感がいさぎよい。毒がしっかりあるというのが好感。 
 一方のドラびでおはドラムを使ってというかドラムの演奏によって映像をコントロールする特殊な表現方法。この日のトリ・ELECTRIC NOMADのときと同じぐらいにフロアには人が集まっていたので、このステージ目当てというお客さんは多かったと思われる。皇室とか安倍晋三とか小泉純一郎とか坂本龍一とかブッシュとかガンダムとかマツケンサンバとかあとは半分以上の下ネタとか、その他もろもろのビデオ映像のサンプリングがスクリーンに映し出され、それらがループされたり、ブレイクビーツ的に連打されたりして、ひとつひとつの曲として構成される。実は事前にはかなり期待していたのだが、正直言って僕にはそれらがあまりおもしろいと思えなかった。下世話性や演奏の激しさが、うわパンク!なんて一見するとたしかに見えるのかもしれないが、もうちょっと踏み込むと、いかにも“頭で考えた批評”的な色が濃いというか、あるいは、あらかじめ枠の定められたアナーキズムみたいな匂いを感じてしまうというか、ようするに表現として突き抜けてくるものがない。僕が感受性が鈍くて、そしてセンスがないだけだろうが、なにかこのパフォーマンスで笑うことそのものがけっこうヌルいことなんじゃないかと、演奏中頭の中をずっと駆け巡っていた。音楽そのものが重要だ、あるいは音楽なんてどうでもいい、というどちらの決意も感じられないというか。
 続いて登場したのが、エッセンシャルというバンド。ギタートリオ+鍵盤の4人組。かなり無名だと思う。セッティングに時間がだいぶかかってしまい、大丈夫か?という不安があったが、期待以上におもしろかった。演奏はもうグニャグニャでグラグラしている面も相当にあるのだが、ヘタウマ感と妙なポップさが不思議に心地良い。なんだろう、一本筋が通っているというか、覚悟が決まっているというか、雰囲気とスタンスに共感できるロックだ。いや、聴いているときはそこまでいいと思わなかったかもしれないが、家帰って翌日になったら、「なんかエッセンシャルっての良かったな」とジワジワ来て、ネットで検索してしまった。↓での彼らのライヴ映像、特に下のほうのやつが好きだ。
http://profile.myspace.com/index.cfm?fuseaction=user.viewprofile&friendID=1000546502
 その後に登場したnemoは、音量とノイズ感は5バンド中際立っていたかもしれないが、冗長な面が強いように思え、自分にはピンとこなかった。
 そしてラスト、ELECTRIC NOMAD。ギタリスト酒井泰三のリーダーバンド。一時間強というステージだが、見せ場もちゃんとつくったプロの演奏を聴かせる。重心を常に低いところに保ちながらつくる、腰の入った力強く粘っこい強靭なグルーヴは、他バンドと桁がもう4つも5つも違うところにある。やっぱり鍛えている人間は違うなあ、という場違いな言葉がなぜか出てきてしまう説得力。相変わらず、快楽的でエグイ音を放出していた酒井泰三のギター。今月28日には国立ノートランクスで、なんと早川岳晴らとアコースティック編成でのトリオをやるそうだ。いったいどんな音を出すのだろうか。