氷もほっときゃ流れるぜ

 一昨日の夜新宿ピットインに聴きに行ったICPオーケストラ。今年3月に行ったオーネット・コールマンのときと同様、「まあ最後かもしれんし一応行っとかなきゃな・・」なんて多分に消極的な気持ちで臨んだのだが、実際に生で触れた感触としては、オーネットとはまったく逆。相当に楽しめた。
 ルックス的に単なるその辺のとぼけた外人爺さんのミシャ・メンゲルベルグのピアノはクリエイティブとかもうそういうところからは完全に降りた、雰囲気で聴かせる感じだし、子供のように好き勝手にドッタバッタやってるハン・ベニンクのドラムはこのICPのサウンドのグルーヴをつくっているのだとは全然思えなかったけど、それでも、ICPの音楽はなんだかものすごく生きていた。
 トリスタン・ホンシンガーのチェロとメアリー・オリバーのバイオリンは荘厳なクラシカルな方には決して傾かず、いい具合の間抜けな軽やかさを保つ。ホーン陣もまたシリアスさを外すのだが、ここぞというときにはグサリッと刺す。(この日のソリストでは、僕はテナーのトービアス・デーリウスのぶっといトーンがかなり好きだった。“ヨーロッパのノンアルコール片山広明”と勝手に命名したい。)ミシャとベニンクが思い描くICPの音像を、ミュージシャンがそんなうまいバランスで成り立たせた理想的な小世界。硬派だけどどこかコミカルなヨーロッパの独立独歩のフリージャズ。そういう世界にリアルに触れられただけでも、本当に良かったなと思えたライヴ。オーネットのライヴについて語るのは不毛だけど、ICPについて語るのは今のジャズにとってとても意味があるように思える。
 話変わって、10月に買った新譜は、クロマニヨンズ板橋文夫ぐらいだ。両者とも正直いまさら、うわすげえ、なんじゃこりゃ!ってわけじゃないけど、例えば今日のような酔っ払ったときに聴くとものすごくグッときたりする。陳腐な表現だけど、聴くと元気が出るというか。ヒロトマーシーも板橋さんも、この先自分はずっと聴き続けていくと思う。なんかそういう存在があるだけでもラッキーなんだろうなと思う。