エクスピリエンシング・トスカ

 祖母の葬儀のために山形の実家に数日間帰省。本日、自宅への到着は20時過ぎ。その後は特に何をする気力もなく寝た。
 先週水曜をもって現在の職場は退職。そして8月からはまた新しい仕事に就くのだが、とりあえずそれまでは短いけれど一応の充電期間・夏休みのようなもの。といっても今週末から3〜4日ほど旅行に行く以外は、これといった予定はない。家でCD聴いて本読んでDVD観て、あるいは外でライヴ聴いて酒飲んでと、まあそんな感じだろうと思う。
 今これを書きながら聴いているのは、テザード・ムーンTethered Moon: Experiencing Tosca」だ。メンバーは菊地雅章(p)、ゲーリー・ピーコック(b)、ポール・モチアン(ds)。言うまでもない大御所3人によるピアノトリオの2004年発表の音源。このCDを買ったのは去年だったが、当初はそんなにピンとこなかったのでほとんど聴いていなかった。しかし何日か前の帰宅時にipodのシャッフルからこのディスクからの一曲「パートⅢ」が流れ、そこでいきなりやられてしまう。家帰ってアルバム全部を通して聴いて、がっしり捕らえられ、そこから飽きもせず何度も何度もこれ聴いている毎日。
Tethered Moon: Experiencing Tosca
 アルバムの大半は、3者の間合いの妙というかリズムのギリギリの攻防に手に汗握るフリーフォームな展開。そこにプーさんの独壇場と言っていい、あのベタベタだが琴線に触れまくる優しいメロディがときおりフッと挟みこまれて、もうそれで心がグラッときてしまう。
 やけにドタバタして聴こえるモチアンのドラムは当初は好きでもなかったが、聴いていくうちにそれが妙な味として聴こえてきてなんだか不思議にはまってしまう。ああジャズのドラムだなみたいな。ピーコックのベースは40年前のアイラーの「スピリチュアル・ユニティ」のときと変わらない。獰猛にえぐりこみダークな雰囲気をつくるが、基本は歌っているベースだ。この爺さん2人がつくるグルーヴは脂っぽさが希薄なぶん、音の鋭さが際立つ。 そして、菊地。さきほど述べたバラードでの美しさは言うまでもないが、フリーフォームでの独特な間、抽象的でいるようでその実すべてブルーズであるようなフレーズと音の響き方。もうその辺りが素晴らしい。
 そういえばプーさんのリーダーアルバムがECMから出るって話は進んでいるのかな?