と、まあ熱く語ってしまったが、昨日の日記の続き。
 セカンドセットが始まり、一人登場したのが古澤良治郎。「今朝自宅のあたりから、こんな声が聞こえたんです」と、いきなり鳥の鳴きまねを始める。「あったか〜、ぽっぽ〜」。古澤のステージではおなじみのKORGのシンセまで駆使して、その鳥の鳴き声をシュールに展開。ファーストセットとのギャップがありすぎて、客席は若干戸惑い気味。10分ぐらい経って古澤独演が終了し、同時に峰厚介原田依幸がステージに。
 古澤の怪演に触発されたか、峰のサックスが虚無僧尺八のような荒涼としたフレーズを吹き始めた。そこに原田のピアノが鋭く切り込みだす。探りあいながらも、峰のブロウと原田の高速のパッセージが徐々に溶け合い、昇り詰めていく。ほんとゾクッとする凄み。ものすごく張り詰めた空気のデュオ。
 続いて、ステージ横で控えていた津上研太が登場し原田と絡む。フリーのフレーズで堂々と大御所と対峙。一期一会という陳腐な言葉が、こと原田依幸絡みに関してはリアリティを持つ。こういう中堅や若手と原田がいっしょに演奏する機会がもっと増えればジャズシーンはもっとおもしろくなるのに、と、余計なお世話だが考えてしまう。
 休んでいた古澤が演奏に加わり、サックス2管とピアノ+ドラムという、まるで後期山下洋輔トリオ+1を彷彿させるスタイルが偶然にもできあがる。そして、ここからがすごかった。
 4人のフリー的疾走がしばらく続くなか、突然、峰が津上になにやら耳打ちをする。なんだろうなと思ったら、2人でサックスの前にあったマイクに向かっておもむろに歌い出した。歌というか叫びというか、適当な鼻歌っぽいフレーズなんだけど、すごくおもしろかったのが、それに呼応して原田のピアノがグッと妖艶な響きに変化しだしたのだ!さらにそれに応えるかたちで2管のサックスが再び獰猛なブロウを放出し、古澤のドラムのテンションも猛烈に上がる。あっというまに駆け抜けてしまったファーストセットとは趣きが違う、腰が据わった力強さを持ったフリージャズといったらいいだろうか。ジャズのスウィングとはこういうことを指すのだろう。興奮する、としか言いようがない瞬間ばかり。
 演奏が終了し、原田が峰に何やら言葉をかけ、ガッシリと握手をしていた場面が印象的だった。次があることを絶対に期待したい。
 そういえば、原田依幸古澤良治郎も先日亡くなった本田竹広と同じ国立音大出身者だったよな。3人はほぼ同じぐらいの年齢のはずで、そんなことを考えると、なんだかいろんな意味で興味深い。