上野公園の入り口のところに建っている東京文化会館という施設で、5日連続の企画として開催された「ポピュラーウィーク」。最終日にあたるこの日の出演は、秋吉敏子(p)とMONDAY満ちる(vo.cl)。ジャンルが違うから当然かもしれないが、意外にも初の親子共演だということ。
 小ホール・600以上ある座席はほぼ埋まっていた。自分はこういうクラシックをメインとした典型的なコンサート施設に来る機会はほとんどないので客観的な評価はできないのだが、このホール、正直言って音響がかなりいまいちだった。なんだか音がこもっている。自分の座っていた位置が悪かっただけかもしれないが、その環境の乏しさに演奏が始まった瞬間少しテンションが下がってしまった。
 しかし、それとは裏腹な、演奏内容の素晴らしい充実。秋吉がグランドピアノを弾いて、それに合わせてMONDAYが歌うかフルートを吹くというシンプルな編成。
 一曲目の「ロング・イエロー・ロード」から思わず身を乗り出してステージを凝視してしまう。
 何が凄いって言ったら、今年77歳になる秋吉のピアノだ。MONDAYの歌を乗せたテーマ部分がひととおり終わった後に弾きはじめるソロ、歌の背後での躍動感のあるバッキング、すべてにぶっ飛んだ。黒いグルーヴ感のかたまりのものすごくゴツゴツしたバップ。パッセージのもたつきが云々とか全く気にならない前傾姿勢で疾走する姿勢に惚れる。それは、クラブジャズ経由の雰囲気ものジャズを求めてきた聴衆にまるで冷水を浴びせかけるような、リアルなジャズだった。装飾がなくどこか淡々と弾きつづけるところもすごくジャズ的だと思う。
 この日の曲目は、全てMONDAYが選んだそうだ。新作「ホープ」とはまた趣きがちがうブルース色の強い選曲は、秋吉の個性を分かりやすいかたちであらわすことに成功させていた。秋吉敏子というジャズミュージシャンをMONDAYというアーティストがサポートあるいはプロデュースした、そんな印象の残ったステージ。