また日野、ディラン

 仕事。やけに疲れていた帰宅時にipodから流れてきた日野皓正「スピーク・トゥ・ロンリネス=日野皓正ライヴ・イン・コンサート」の「'Round About Midnight」(75年録音)にやられる。ほとんど無伴奏のソロが11分以上。しかしその間、音楽はいっさい弛むことがない。
スピーク・トゥ・ロンリネス=日野皓正ライヴ・イン・コンサート
 日野の吹くトランペットの中音域の太さにまずガッシリと耳を捕らえられた後、そこから力強いハイトーンへ駆けあがっていくときの解放感を体験すると、マイルスもいらないかもと一瞬思ってしまうほどだ。生々しく、艶があって、しかし澄んでいる音。クラブジャズ的文脈で形容される「スピリチュアル・ジャズ」っつうのは、本来こういう音を指すべき言葉ではないだろうか。シーンには、まずこの辺って無視されてるかと思うけど。
 読み始めた「ボブ・ディラン自伝」、特にディランの下積みの頃(50年代中盤?)のニューヨークの音楽話が生き生きとしていておもしろい。

 ジュークボックスに入っていたのは、ほとんどがジャズだった。ズート・シムズハンプトン・ホーズスタン・ゲッツ、それにリズム・アンド・ブルースが少し。バンブル・ビー・スミス、スリム・ゲイラード、パーシー・メイフィールド。ビートニクはフォークミュージックを許容してはいたが、本当には好きでなかった。彼らはモダンジャズ、つまりビバップだけを聴いた。
ボブ・ディラン自伝・P59より抜粋)


 ちなみに当時のディラン自身は、「わたしの宇宙を支配するのはウディ・ガスリーだった」という状態だったらしい。
 数年後、無名のディランをスカウトしたコロンビアレコードのジョン・ハモンドって、ビリー・ホリディ、チャーリー・クリスチャンキャブ・キャロウェイベニー・グッドマンカウント・ベイシーといったジャズ巨人らを発掘し世に出した音楽プロデューサーでもあるわけだが、まあそのセンスというか才能はほんと歴史に残る人なんだと思う。この人にも興味が出てきた。