さて、ユニオンを出て、国立ノートランクスへ。今日のライヴ出演は、片山広明トリオ。
 メンバーは、片山(ts)、早川岳晴(b)、つの犬(ds)。お馴染みの面子っぽいが、この組み合わせって実はそんなにないらしい。
 片山広明というミュージシャンが相当にキャラが立ってるということは言うまでもない。ただこれは僕の偏見かもしれないが、なんとなく「飲んだくれの豪快なテナー吹き」というイメージがあまりに流布しすぎているかなと思う。実際、僕もこの人の演奏を観ていた最初の頃はそんな捉えかたをしていた。いやあこのおやじ、いいキャラだなあ!みたいな。もしかしたら、最近の片山広明のメインと受け取られている仕事、例えば渋さ知らズやキヨシローや板橋さんのところでの仕事を見るかぎりは、それは誤解ではなくある程度正しい認識なのかもしれない。
 もちろん彼の音の個性というのは、その辺にはそうそう転がってる代物ではないし、プロとして押さえるところはしっかり押さえる技術もさすがだということは否定しない。しかし、何と言うか、リアルな片山広明、追い込まれたときにものすごい音を出す片山広明、やはりそういうものを聴きたいなと思ってしまう。そう、単なるキャラ立ちしたオヤジではない、真摯で求道的な青年(?)のようなこの人の面を(個人的には)初めて垣間見た、今年2月の江藤良人&井野信義とのトリオの素晴らしさを僕は忘れられないのだ。
 と、相変わらずの暑苦しい文章になったが、この日のサックス・トリオというフォーマット、そういう意味で非常に楽しみにして臨んだ。
 前半に関しては、お馴染みのコッテリ片山ワールドかなあと思わないこともなかった。ロックやファンク色(早川色?)が強いゴツゴツした音の感触はもちろん嫌いではないが、久しぶりとはいえ勝手知ったる3人だけにどこかスムーズに流れてしまっている、そんな風にも正直感じられる。
 しかし、セカンドセットの後半、泥臭いR&B然した楽曲、これがハッとするぐらいかっこよかった。テンポが速いファンキーなダンスビート、そこに片山のサックスが強烈にブロウして、さらにグイグイと引っ張りまわす。コテコテで熱い、そしてスリルがある。本人がMCで、「キャバレー時代に、ゴーゴーをお願いしますと言われたら、やってた楽曲です。」と解説していたが、片山広明のルーツというか本質が分かるエモーショナルな演奏に興奮した。