宮沢昭の「いわな」

 今週が忙しさのピークだろうか。ともかく、職場ではなんだかやけにハイ・テンションになったり、一転グダーっとなったり。
 仕事は9時過ぎまで。その後は、電車で国立駅へ向かう。ノートランクスにて、宮沢昭特集を聴くため。CD化されている音源もそれほど多くなく、また、ムード・テナー的なとらえ方を一部ではされたりと、多分に過少評価されているこのサックス奏者。(越路吹雪のバックで吹いてたりもしてたらしい。あと、キャバレーとかで)
 僕がこの人のリーダー作や参加作品で聴いたことがあるのは、守安祥太郎秋吉敏子モカンボ・セッションと晩年に出た「シー・ホース」ぐらい。まあほとんど知らないと言っていい。
 ノートランクスの店内に入って流れていたのが、ナベサダの59年のリーダー作。その次に出てきたのが、コテコテのハード・バップというか「モーニン」。曲や演奏者や編成が、当時のスウィングジャーナル読者投票によって選ばれたオールスター企画もので、1960年の作品。白木秀夫や金井英人やナベサダも参加してる。アルバム・コンセプト上、仕方がないのかもしれないが、宮沢の個性がいまいち分からない。続く、秋吉敏子のリーダー作(秋吉敏子 1961)や山女魚(62年)も個人的にはそんな印象。
 日本のジャズ界そのものがまだアメリカの状況を追うことに終始していた時代だからか。というか、単に典型的ハード・バップだから刺激がないのかもしれない。
 そんなことを考えながらカウンターに座ってたら、突然ドラムの轟音がアルテックから飛び出す。69年の富樫雅彦、だ。すげえ。それまでの空気がガラッと変わった。抜き差しならないギリギリの緊迫感を持ったカルテットのフリージャズ。ピアノは佐藤充彦。宮沢のサックスは、山下トリオの坂田明か?と思うぐらいのフリーキーなトーン。拡散していた自分の感覚が一瞬でその音に吸い込まれる。これが「いわな」か。いや、たしかに凄いわ。これ聴けただけでも良かった。