松風鉱一トリオのライヴ。メンバーは、松風(sax,fl)、吉野弘志(b)、藤井信雄(ds)。ベテラン・ジャズメンによるサックス・トリオ編成だ。ノートランクスHP上の告知にもあったように、吉野&藤井はかつての坂田明トリオのリズム隊。この3人でどんな具合の音が出てくるのか、想像しやすいようでしにくい。フリーかなあ?とにかく興味を持ってライヴに臨む。
 遂にドロップされたアルバム→http://www.studiowee.com/news.html(試聴可)でのカルテットの演奏を聴けば分かるけど、松風さんの書く曲って、良い。なんかちょっと歌謡っぽいメロディーや不思議な雰囲気もあったりして。この日は全編、そのタイプの松風オリジナル。ただ、レギュラーグループとは勝手が違うということもあってか、いまいち前半は噛み合いきれてないかなと正直思った。
 それが変わったのが後半。的外れかもしれないが、これクラブ・ジャズ?とか一瞬思った。リズム隊がつくる跳ね気味でバウンシーなビートに松風さんのフルートやサックスが柔らかーくいい塩梅で乗っかっていく。いやあ、このグルーヴはすごくクールだ。気持ちよくて、想像力が膨らむ音。
 「むかし、坂田明とゴリゴリのフリージャズをドイツで演奏した際、ドイツのお客がみんなそれに合わせて楽しそうに踊っていたのを見て、いやあさすがだなと思った」そんなことを、以前吉野弘志さんが話していたことを思い出す。もちろん表面的には今夜のこのトリオが奏でるスウィング感は、硬質なフリージャズとはかけ離れたものだ。ただそういうフリージャズをやってきた人たちだからこそ出せる音楽だな、と思う。一見緩いようでいて、戦闘的フリージャズと同質の張りつめたギリギリの感覚がこのトリオにはあって、それがあるからこそ生まれる、絶妙なグルーヴなのだ。