この日の高円寺ジロキチは、酒井泰三「エレクトリックノマド」のライヴ。酒井泰三にとってはメインだが(なにしろ自身HPのタイトル「エレクトリックの窓」だ)、そんなにライヴの機会が多いとは言えないこのバンド。個人的にもかなり久しぶりだなと思って過去の日記をたどったら、自分が聴くのは去年の1月以来になる。
 メンバーは、酒井泰三(Vo,g)、太田恵資(vlin)、佐藤研二(b)、佐野康夫(dr)。佐野さんって、いろんなところで叩いてるらしい、ちょっと驚いた。下記のサイトでファンの方が、佐野康夫仕事一覧をつくっていられる、素晴らしい!ここ見ると、佐野さんって知らずにテレビなんかで耳にしてるのがけっこうあるような気がする。
→ http://www.h3.dion.ne.jp/~groove/artist/list_artist.html 
 さて、そんな数多い佐野康夫・参加仕事の中でも異端というか、かなり左寄りに位置するエレクトリックノマド。この夜はレコーディング・ライヴでもある。スタート20時の時点で、ジロキチ客席は立ち見も多く出る満員状態。
 マイナーの響きとシャッフル気味のビートがやけに刺さるファースト・ステージ2曲目(だったかな?)を聴いていて強く感じたのは、このバンドの世界観って思ってた以上にポップなんだなということ。3月の古屋杏子さんとのデュオでもよく分かった、酒井泰三の音楽観の中に核としてあるポップソングという概念を、このエレクトリックノマドは今のところもっともよく体現している。
 咆哮と、軋みと、重さを先鋭的に響かせたポップなギターロック。それこそかつてのグランジオルタナや、もっと昔のギャング・オブ・フォーとか、そっちからの流れで聴くと、実はかなりピンとくるのかもしれない。音の歪みのリアリズム、とでもいったらいいだろうか。それはスノッブ的表現とは対極にある、こちらの心をギューーっと掴む音。
 加えて、白人パンクは総じて弱い、リズムという点では、このエレクトリックノマドの腰の入り方は相当なものだというところも特筆したい。まさグルーヴ・肉体性への自覚が半端ではない。特に佐藤研二のバッキバキなベースがとても重要な要素になっているのだと個人的にはすごく感じた。
 誤解を恐れず言えば、この独創的なサウンドそしてものすごいエネルギーをどうさらにポップで洗練されたかたちで打ち出すか、エレクトリックノマドネクストはそこだと僕は思う。
 とにかくこのリアルさが感じられる限り、自分はこのグループそして酒井泰三のギターを追い続ける。