藤波辰爾三沢光晴が東京ドームでそんなおやじオーラを出していた昨晩、自分がいたのはいつも以上におやじ率が高い新宿ピットインの客席。演奏していたのは廣木光一(Acg)・渋谷毅(p)のデュオ。
 廣木さんのオリジナルが中心のセットリスト。ジョビンなんかもやってた。
 渋谷さんのピアノを生で聴くのは、去年の8月荻窪グッドマン以来だ。
 甘いメロディーのボサノヴァに最初はフラフラっと寄り添うように弾いている印象だったが、フレーズを伸ばしたり、積み重ねていきながらジワジワと独特な盛り上がりがつくられていく。気づいたら自分の感覚が渋谷さんの探求する音の流れに同化している。相変わらず暑苦しい言い方になってしまうが、これを聴いていて、癒しや温かさというよりは、僕が感じるのは興奮だ。とにかく聴いてるあいだ、やたら感覚がとぎすまされるというか。
 爽やかな音色と旋律の廣木さんのアコギは思っていた以上に黒さが希薄で、渋谷さんの音とは個性の出かたがだいぶ違うなとも思った。