さて、その後は国立NO TRUNKSへライヴを聴きに行く。今夜は、久保島直樹トリオの演奏。このグループのライヴを聴くのは4回目ぐらいかな?前回は、昨年11月にやはりこの店で聴いた。メンバーは、久保島直樹(p)、是安則克(b)、藤井信雄(ds)。
 アンコールも含め、全9曲の演奏。モンクやマルの曲での演奏も良いけど、このトリオでは久保島さんの楽曲が何といっても聴きどころが多い。この日は5曲の久保島オリジナルで、それを演奏した順に記すと、①「マル・ウォルドロン」、②「オーネット・モンク」、③「レッド・ホット」、④タイトル不明のバラード、⑤「サークル・ダンス」。
 今回特に感じたのは、このリズム隊がすごく自分は好きなんだなあということだった。菊地成孔さん絡みでの仕事も多い藤井さんのドラム。力強いグルーヴと抜けがいい音だ。そして是安さんの妖艶でサディスティックなベースがそこに絡みながら昇りつめていく。いや、かなりかっこいいと思う。特に①⑤での是安さんのアルコが終わって、再び曲が走り出したときの何かゾクッとくるような感覚なんて、もう最高だ。
 それに対抗する久保島さんだが、中盤までは調子掴めずという感じかと、正直思った。リズム隊のつくる強力なうねりに乗り切れていない、あるいは他の2人の音をグイっと丸めこむ強引さにも今日はちょっと欠けるかなあ、そんな風に聴いていた。もっとキレてほしい!みたいな。
 で、ようやく最後の⑤で、凄い演奏が聴けた。豪腕というわけでもまた華麗な技術で聴かせるタイプでもないピアニスト久保島さん。しかし、ミニマルなフレーズを積み重ねていくうちに独特な高揚感と興奮を持った音楽空間ができあがるという、彼ならではの不思議な世界が見事に発揮されていた素晴らしい本編ラストだった。