さて、相変わらずの妄想めいた内容はこれぐらいにして、昨夜のライヴ。国立ノートランクスにて、A.T.M.。メンバーは、江藤良人(ds)、和泉聡志(g)、佐藤帆(ts)、安東昇(b)。エフェクトを駆使したエレクトリック・ギター、アンプを通して思いっきりひずませたウッベ、またサンプラーを使ったりと、面子はジャズなのに、雑食系の音楽性というグループ。江藤さんのドラムは、2月のあのほんとにかっこよかった片山広明トリオで聴いたけど、このグループに関しては自分が聴くのは昨年4月の昼ピットイン以来になる。
 雑食的音楽とひとくちに言っても、それをその表現者が自分の表現として消化しているのか、あるいはどっかから持ってきたものをただツギハギ的に繋ぎあわせているだけなのかを見極めることは重要だ。言うまでもなく、後者ではこちらの胸に届かない。
 あくまでセンス・趣味の問題ではあるが、たとえば新作を出す菊地成孔さんのデートコースのおもしろさが全く分らないのは、僕には彼らの音楽がつまるところそういう「ツギハギ的」にしか聴こえないからなんだろう。無難なフュージョンとかとの差が音から見出せないというか。もっともフュージョンを語れるほど、自分はほとんどその辺のジャンルは聴いてないから、まあ偏った見方なんだけど。
 さて、話がずれてしまったが、そういう意味でこのA.T.M.の音楽性というのも、リスクは高い面がある。「ロック的」「ジャズ的」「テクノ的」「歌謡曲的」といったそれぞれの音楽エッセンスを、結局それぞれのその常套句を奏でるだけにもし終始すれば、そこには刺激はない。
 1年前に彼らを聴いたとき、佐藤帆さんの演奏にすごく僕の耳は反応したのだが、今回その認識はさらに深まった。雑食性が音楽表現の深さと豊かさにつながっている素晴らしいサックスだ。よく使われる言い方であらわせば、「頭でやってる音楽」とは全くかけ離れた音というか。このA.T.M.というバンドの音は、その彼の個性をすごく活かす音だなと思った。