急いで電車に乗って国立へ向かう。NO TRUNKSでライヴを聴くために。この日のステージは、五十嵐一生(tp)と吉澤はじめ(el-p)のデュオ。
意外な組み合わせという印象のこの2人、実は20年以上前からの付き合いらしい。日本のクラブ・ジャズの中心人物と言ってもいい吉澤さんのノートラ初出演で、いつもとは客席の雰囲気・客層が違ってくるのかなあと予想していたが、普段とあまり変わらずやや拍子抜けした。
ステージ空間の中央には、フェンダー・ローズとムーグ、向かいあう形でもう一台のキーボードがデーンと陣取っている。それに加え、エレベやCDJ、サンプラーらしきもの、そしてトランペットが置いてあり、演奏始まる前からなんだか実験音楽的匂いがプンプンして、期待度が高まる。


8時15分過ぎに演奏が始まって、いきなりぶっ続けのインプロ展開。吉澤さんのムーグの低音・轟音とノイズが混沌とした音像をつくりだす。五十嵐さんもときおり鍵盤に向かい、音を重ねる。やがて吉澤さんのフェンダー・ローズが、暗いブルースを紡ぎだし、そこにアンプを通した五十嵐さんのトランペットがなまめかしく鳴り響く。CDJでリズム・トラックがかけられそれがさらに混沌とした雰囲気を濃いものにしていた。フリー色の強いアクの強いエレクトリック・ジャズだ。


ちょうど1時間(!)ほど経過し演奏が終わり、ああ1セット終わりかと思ったら、吉澤さんがおもむろに客席に背を向けベースを弾き出す。同じフレーズを繰り返し、なんだろうなあと聴いてたら、その音をサンプラーでループにし、今度はそれに合わせ、鍵盤を弾き出した。こちらが勝手に抱くクールなクラブ・ジャズというイメージのかけらはそこに全くない、ハードな音と吉澤さんの人を寄せ付けない佇まい。ここでの五十嵐さんのトランペットは思ったよりもエレクトリックしてなく、音数もそれほど多くなく、またフリー的でもなく、短めのフレーズの一音一音を重視するといった凄みが感じられるものだった。


休憩の後、2セットが始まる。前セットが1時間半以上に及ぶものだったということもあり、トータルで40分ほどの演奏。やはりベースのループを基にした1セットの延長の音だった。アンコールは、ちょっと曲忘れたが、スタンダードをシンプルに。


普段できないことをここで演る!という吉澤さんの意志が非常に強く演奏に出ていたライヴだった。濃かった。そういえば、聞いたところによると、五十嵐さんって1月にこの店で井野さんとやったときもやはりエレクトリック路線だったらしい。井野信義のエレクトリック・ジャズってどんな感じだったんだろう。聴いてみたかった。