仕事は19時近くまで。その後は電車に乗って急いで高円寺に向かった。ジロキチでの酒井泰三「3355」のライヴを聴くため。


ギター、ベース、ドラム、ヴァイオリン、そしてタンテという組み合わせを基本として、2004年の酒井泰三が力を入れてきたこのユニット、とりあえずの集大成的意味もあるのだろうかこの日は待望のレコーディング・ライヴだ。


今年の5月ぐらいから泰三さんのライヴを積極的に追いかけるようになって(今年11本)、特にその中でも「3355」というユニットは個人的に今最も気になる。
その理由のひとつは、8月の寿町フリーコンサート・ベストアクトだった彼らのステージが鮮烈な印象として記憶に残っているからだということは間違いない。しかし、それとはまた別に、このユニットのターンテーブリストという存在がやはり興味深いのだ。


もっとも、いわゆるブレイクビーツをなんらかの手法で音楽に取り入れているケースは昔からいろんなジャンルで無数にあるわけなので、そのバンドスタイルそのものがおもしろい云々という話ではない。


後期ジミヘン直系の酒井泰三のギターが、ブレイクビーツによってどんな音を引き出されるのか?「3355」のコンセプトってそういうのかなあと初めの頃は思っていた。イメージ的には例えばテクノやヒップホップを取り入れた(昔で言う)ミクスチャー的ロック、あるいはへヴィーでノイジーなギターが乗っかったブレイクコアとか。
しかし実際の彼らの音は予想以上にそんな硬直的で直線的なものではなかった。バンドのサウンド全体が強力な音の塊となりながらも、そこに広がりが生み出されているというか。ターンテーブリストのブレイクビートはここではサウンドの広がり・スペースをぐっと大きくする効果を出しているように思える。バンドが主でDJが従、あるいはその逆ではない。そしてその広がりの中でそれぞれのソロが配置され、グルーヴが形成される。


特にこの日、ジロキチでの演奏は素晴らしかった。グルーヴが高速で昇りつめていくような、なんだかそんな凄みがあったのだ。