一昨日、国立のNO TRUNKSで、岡淳と江藤良人のデュオライヴを聴いた。前も書いたが、オレペコの去年出たアルバムの中の「メトロ」を聴いてかなりグッときて、この曲に参加しているジャズ・ミュージシャンのライヴに一度は行こうと決意していた。中でも岡さんのテナーと椎名豊さんのピアノは感動的で、椎名さんの方はまだライヴ行ってないが、岡さんはこの日ようやく初めて聴けた。
ステージ上は機材やケーブルでやけにゴチャゴチャしていて、なんだろうなあと思っていたら、この日のライブを録音するとのこと。そのためのハードディスクやらマイクやらが散乱している。そして、意外だったのがサンプラーサンプラーを使って岡さん自身の歌声やサックスの音をループさせ、それに合わせ2人が演奏をするという楽曲「パンチパーマ」はおもしろかった。ここでは「パンチパーマ、パンチパーマ」という鼻歌がループされた。オレペコのアルバムで聴いた限りでは想像してなかったが、基本的にハイテンションのギャグをときおり演奏にまじえる岡さんはなかなかの変人。しかし、エディ・ハリスやモンクの曲、また「Nature Boy」などのスタンダードにおけるテナーの安定感は素晴らしかった。ブロウで圧倒したり鳴り一発で決めるというよりは、リズムに巧く音を乗せて盛り上げをつくっていくと言ったらいいだろうか。ロリンズなんかと通ずる、いいとこでいい感じに音が入ってくるみたいな。いわゆる中央線ジャズの屈折とはちょっと違う匂いの、まっすぐなモダン・テナーという印象だ。
それと、江藤さんのドラムやっぱいい。NO TRUNKSのマスターがエルヴィン・ジョーンズのプレイを引き合いに出していたが、自然で絶妙なシンコペーションと音の厚さそして力強さでグイグイ持ってく。全体として陽性のグルーヴという感じがして、すごくスカッとする。
今思えば、オレペコの「メトロ」で好きだったのも、そのバップをベースにしたストレートなノリだったわけだが、こういうノリがいいと思えるようになってから自分はようやくジャズを本当に好きになれたのだと実感として思う。今挙げた中央線ジャズやフリーやエレクトリック・マイルスやあるいは菊地成孔を理解するためには必ずビ・バップやハード・バップあたりを基本として身に付けなければいけないとか教条主義的ことは言いたくないし、音楽の聴き方なんて基本として自由だと思う。ただどうかなあやっぱパーカーやモンクやブルーノートって聴いておいたほうがいいと思うなあ。まあジャズ好きと自称する人は当然通過してるんだろうけどなあ。かく言う僕もエリントンとか全然聴いてないし、ほんとまだまだ勉強が必要だ。
勉強っていう言い方もよくないが、ジャズを聴き始めてからこの1年半、ジャズを聴くという行為は一種のトレーニングみたいな部分が自分としてはあった、ジャズ耳をつくるための。ロックやテクノやヒップホップやエレクトロニカしか聴いていなかった人間にジャズの聴き方が簡単に身につくわけがなく、まあ今だって身についてるかは怪しいもんだけど少なくとも一番好きな音楽はジャズだという状況はしばらく揺らぎそうにないぐらい自分の中に定着はしている。そんなことをHMVで買ったチャールス・マクファーソンの素晴らしい新譜を聴きながら考えた。