さて、先週の土曜日に行ったアケタの店での清水くるみ・ZEKオーケストラのライブについて書きたい。
レッド・ツェッペリンの曲をジャズのフォーマットで演奏しようというこの企画は、もともと清水さんがピアノ・トリオでやっていて、この日はそれのアケタ30周年特別ヴァージョンだ。ZEK=絶句ということかな?パーソネルは、渡辺隆雄(tp)林栄一(as)片山広明(ts)松本健一(bs)のフロントに上村勝正(b)本田珠也(ds)そして楽団長清水くるみ(p)というセプテット。以下の曲目で分かるように、ZEPのなかでも比較的渋めの曲が多く選ばれていて、その点でも単なる企画もの・お祭り的なものではないということが感じられる。

<曲目>
1セット①Communication Breakdown②In the light③Trampled underfoot④Since I've  been loving you⑤Four sticks
2セット⑥Celebration day⑦KashmirHots On For Nowhere⑨I’m gonna crawl⑩How many more times
アンコール Moby Dick

1セット①でまず大興奮状態。ジャズの老舗アケタとは思えないロック的な空間がステージと客席で爆発する。で、そのテンションは最後まで落ちることなく続いた。ZEP1枚目に収録されているオリジナルを聴いてもこの曲で(いまだに)盛り上がれる僕だが、ZEKオーケストラ4人のフロントおよびリズム隊バージョンもほんとに圧巻だった。清水さんのピアノが聴こえないぐらい音がとにかくバカでかい。特に林栄一氏のソロはジミー・ペイジのギターソロよりもめちゃくちゃに扇動的なハードロックだ。
こりゃすげえなこの感じでいくのかなあと思ったら、②ではかっちりとした構成。⑦なんかもその傾向。ツェッペリンのこのようなスケールでかめ系の曲って僕はそんなに好きじゃない。ただこのZEKオーケストラの場合、各自のとるソロがもうものすごい音出てるんで全然OKな感じがする。もうひとつ言うと、ZEPのドロローンとしたブルースも僕は苦手で、楽曲的には④と⑨がそれに該当するが、この日は同じ理由で全然OKだった。特に片山広明の泥臭いが突き抜けているトーンのテナーのソロにまったくもって説き伏せられた。参った。
清水さん曰く「ZEPの曲やるにあたって、片山さんと林さんは外せないんで、何がなんでもスケジュールを押さえた」ということで、実際やはりこの2人の演奏の強烈なオリジナリティはZEPだろうがなんだろうが不変であるのと同時に、その技術は楽曲の魅力を最大限に引き出してもいるのだ。プロだプロ。
さて、じゃあツェッペリンで僕はどういうのが好きなのかと言えば、それはファンクでイケイケでソリッドで力まかせにグイグイ持っていかれる曲であります。具体的には中期〜後期かな?この日で言うと、③・⑧がもうもろにそういう楽曲。③なんてZEPの中で一番好きな曲。ダッタ・ダラダラダッタという有名で印象的なリフ。で、やっぱこの曲がこの日でもっとも興奮した。特にこの日のZEKバージョンにおける松本氏のバリトンサックスの存在感は特筆もの。曲のうねりを低いところから支えつつ、ソロでは大爆発みたいな。
ボンゾ本田氏のドラムソロがすさまじかったアンコールを聴いていても思ったが、ZEPの楽曲はリズムに結局興奮するんだな。アルバムで言うと「フィジカル・グラフィティ」や「プレゼンス」とか。そしてそのテンパったリズムによって、ペイジのソロやロバート・プラントのシャウトが異様な力を引き出されるという構造。この日で言うと、全員そうだったとも言えるが、やはり林栄一氏のアルト・ソロは循環奏法とかそういう細かい話はもうふっ飛ばしても、異様な説得力が引き出されていた。
最後に楽団長の清水くるみさんについてだが、椅子から腰を上げ立ち上がって、ピョンピョンと飛び跳ねピアノを叩く様はもうほんとに可愛いですとしか言いようがなく、またぶっ叩かれるビートに合わせ鳴らされた激しく華麗で躍動的なブルースはほんとに魅力的だった。選曲と編曲のセンスも素晴らしいし、個性派集団の演奏をまとめあげるその腕も見事。くるみファンになった。
そういえば、超満員の店内には夫の渋谷毅さんの姿も発見。