暖かいんでコートを脱いで、立川駅まで向かう。おなじみ西荻窪アケタの店へ。今日は小林洋子さんのピアノ・トリオ。この人のピアノはなんかこっちで無理やりテンションをあげなくても自然に聴ける優しさがある。自分的にはかつてのデガショーで弾いてる人だよなあの上村さんのエレクトリック・ベース、抜けがよくソリッドな音を叩く千光士さんのドラム。
そんなトリオの2セットの演奏を聴き終わって考えたのは、自分の耳に最近進歩がないなあということ。3週間前の清水くるみトリオのライブの感想で似たようなことを書いたが、ジャズの耳が自分にはちゃんと育ってない。止まっている。今日のこのステージもちょっと分かんないなあってところがけっこうあったのだ。原因は自分の耳の未熟さだと思う。
「ロックやクラシックやヒップホップやどこか違うジャンルの基準をジャズにあてはめて、良い・悪いを述べても何の意味もない。ジャズにはジャズの文脈があり、ジャズという音楽を理解しようとするなら、ジャズの聴き方を身に付けなければいけない。」後藤雅洋の著作を読んで、氏の(おそらく)そんな主張になるほどと思わされ、その考えを基にとにかく実践・実践の道を歩んできたジャズ初心者としての1年だったが、なんとなく行き詰まり感がないでもない。たしか油井正一さんが「生きているジャズ史」だったかで書いていたと思うが、聴き始めの1年はグワーッと異常に盛り上がるがその後はスッと引いていくというパターンのリスナーってジャズには多いらしい。油井さんがそれを書いたのはめちゃくちゃに昔だが、これは真理だな、現に俺はそのパターンに陥ってる1人じゃねえかと今日は深刻に悩んだ。
逆に言えば、そういうことを気づかせてくれたアケタの店はやはり凄い。今年30周年を迎えるこのライブハウスは最初の敷居こそ低いがニセモノは徐々にちゃんと振り落としていく素晴らしいジャズの学校なのだ。
別にライヴに数多く通ってりゃあいいってもんじゃない。CD・レコード多く買えばいいってもんじゃない。正論すぎてあれだが、1枚からでも2枚からでもじっくり聴くしかないのだ。認識なんてすぐは変わらんが、とにかく聴いて消化していくしかない。