ナーダムのライヴ、キックの鬼

午前は仕事。午後2時ぐらいに職場を出て、駅前の中華の店で昼飯。けっこう混んでいて、頼んだものが出るまで時間がかかる。そんななか僕の後ろのおやじが「ねえ!お酒まだなの!おかしいよー!!こんな時間かかるなんて」と大声で怒鳴りまくって、まわりの客に不快感を与えていた。店内には子供もいるのにクソジジイ。昼間から酒飲んで、競馬新聞を読んで、手もブルブル震えている、すさんだ佇まいのジジイ。嫌だ嫌だと思いながらも、黙っていた自分も情けねえなあ。
と、まあそれはいいとして、その後は駅前の本屋で梶原一騎「キックの鬼」全三巻を買う。読み進めたが、どうも聞いたことがあるようなというか、あきらかに空手バカ+巨人の星といったテイストの設定と展開と台詞。山ごもり特訓時の片眉剃りなんて、空手バカ一代とまるっきり同じエピソードではないか。しかし大山倍達氏も沢田忠氏もこれはまぎれもない真実であるとまんがの中では断言してるしなあ、なるほどすごい偶然もあるもんだなあ・・・って、そんなわけないだろう。まあこういう怪しさも含めた豪快さが梶原作品の魅力だからいいんだけど。帯にはジャーナリスト斎藤貴男氏がやたら興奮したテンションの高い推薦文を書いている。
家に帰って夕方一眠りした後、国立のNO TRUNKSへ。林栄一のグループ、ナーダムのライブを観に。
ナーダムは初めて聴いたが、もう一曲目からやたらかっこいい。ソリッドでハードでノイジーで熱い。「平和に生きる権利」、「夢見るシャンソン人形」、「チャイニーズ・サーファー」などユニークな曲に耳が引きつけられる。前半・後半通じて全体的に各メンバーのソロはわりあいコンパクトで、林氏の吹く印象的なテーマでビシッと曲が締められるという構成の楽曲が多い。こういう楽曲だと聴く方としては緊張感が切れず、気持ちが入りやすい。
もちろんこちらの気持ちが入るというのは、楽曲の構成以前に何よりもこのカルテットの鳴らす音に説得力・魅力があるからなのだが。斉藤氏のギターはグギャギャーンと扇動し、つの犬氏の奔放なドラムがドゥゴン・ヴォカン・ポコンポコン・スカーンと走りまわり、ベースの伊藤氏はクールにリズムをキープしながら、ソロをグイグイ弾く。林氏は今日は風邪をひいて熱があるとのことだったが、演奏への影響は感じられず。リアルとエッジ感。月並みで感覚的な表現だが、まさにそうとしか言えないアルト。情熱も苛立ちも感傷もユーモア感も瞬間的に全て音の中に閉じ込められ、空間に放出される。彼のアルトを聴いて自分の胸に沸き起こる不思議な高揚感は、そう体験できるものではない。
リアルとエッジ感、それは林氏のアルトだけではなく、ナーダムというグループの音楽そのものの印象だ。ジャズでもロックでもエレクトロニカでもヒップホップでもテクノでも古い音楽でも新しい音楽でも、結局自分が今まで聴き求めてきて反応するものは、リアルとエッジ感、それだけだ。
11時過ぎの自転車での帰り道、ほんとに寒かった。