ソニー・ロリンズ日本公演最終日

文京シビックホールでのソニー・ロリンズの日本最終公演は、午後4時という非常にはやい開演だった。
全体的に今日の演奏は2週間前の初日よりもバラードなどの歌もの中心の選曲だった。どちらかというとそういう音楽に感情移入があまりできない僕は、前半けっこうウトウトしてしまった。まずいまずいと思いながらも眠りの深みにはまる。1時間ほどの1セットめが終わるころの「ドント・ストップ・ザ・カーニバル」でようやく目が覚め、気持ちを引き締める。50年代のジャズ黄金期ハードバップの中心人物で、その後もジャズ界のシンボルの1人として素晴らしい歴史をつくってきた男がこの場にいるんだ!と無理やりにテンションをたかめる。梶原一騎を読んでいるせいか最近そういう盛り上がりかたをよくしてしまうな。
まあそれはいいとして、初日よりもロリンズ以外のメンバーのソロが少なくなっていて、なおかつ歌もの中心となると、ロリンズが吹くテナーばかりがいやでも聴こえてくる。なんかキレ悪いかなとも思ったりする部分もあったが、73歳ロリンズのブロウはとても熱くしかも軽快だった。正直後半の最大の山場「セント・トーマス」でのテナーの勢いに圧倒され他の曲についてはあまり覚えてない(前半寝ていたから当然だけど)。懐メロ的で健全ではないが、この曲でのこの素晴らしいソロを聴けただけでも今日はきてよかったと思えたぐらいの名演だった。会場もかなり盛り上がっていた。
今回のロリンズのグループはテナーとトロンボーンがフロントで、後はドラム、ベース、パーカッションという編成だったが、その難解さがない優しく暖かい音の雰囲気はとても心地よく、むりやりジャズの耳をこちらで用意しなくてもすんなり世界に浸れるものだった。また、得意のカリプソなんかを最大限に効果的・創造的にロリンズが演奏するには、今回は最適の編成だったと言える。
後藤雅洋だか中山康樹が、ロリンズはそんなに悩んだりしないから生き延びていられるんだと笑い話で言っていたが、良い意味でそれが理解できたライヴだった。まだまだ生きて、日本にどんどんきてほしい。