イベント「稀代のジャズ評論家 油井正一氏を偲ぶ」

■イベントのお知らせ
6月7日(月)19:00〜
「稀代のジャズ評論家 油井正一氏を偲ぶ」
会場:国立ノートランクス http://notrunks.jp/
チャージなし。通常の飲食代のみ
 
 6月8日は、日本が世界に誇るジャズ評論家・油井正一氏の命日。今年は13回忌に当たります。その命日前夜に、油井さんが愛したジャズを聴きながら、氏の偉大な功績を振り返る会を催します。ノートランクスにあるたくさんのジャズの音源(油井さんが解説を書いたレコードやCDなど多数用意していただいております)、そして今回はなんと慶応大学の「油井正一アーカイヴ」から特別に貴重な資料をお借りすることができたので、そちらもご覧いただくことができます。進行はノートランクス店主・村上さんと、後藤が務めます。



“ジャズは反抗の音楽といわれる。反逆精神の持ち主によってジャズは発展してきたようにみえる。だが、数人のイノベーターを反逆精神の発露として捉えるような解釈は、観念論としてなりたつようにみえるが正しくはない。アームストロング、ビックス・バイダーベックビリー・ホリデイレスター・ヤング、パーカー、モンク、コールマン、アイラーのどれをとっても、自分自身に忠実であったことが、結果的にイノヴェーションになっていた〜という観察が素直に的をついてるように思う。
 これはまたぼく自身の「ほんもの」と「にせもの」を鑑別するときの立脚点である。「伝統がなんだ!既成の一切を破壊するところから我々の新しい芸術が生まれる!」と気負い立った連中の手で「ほんもの」が生まれたためしは、残念ながらジャズの歴史に一度としてなかったのである。”
(油井正一著「ジャズの歴史物語」より抜粋)
 
 5〜6年ほど前だったかジャズを聴き始めの頃、油井さんの「ジャズの歴史物語」を国立の古本屋で買って読みました。僕自身のジャズを聴いてる量も少なかったということもあり、正直言えば内容のほとんどが頭に入らなかったのですが、上記のような基本的なジャズについての考え方・聴き方、歴史の見方、そういったものには分からないながらもすごく共感できたと記憶しています。
 そして今回数年ぶりに同著を通読したのですが、その内容の深さに感動に近いものを感じてしまいました。氏の膨大な知識量、客観的な分析力、様々な伏線を張りながら「ジャズの歴史」として紡ぐその筆力。「へーなるほど!」と、初めて読んだわけではないのに目から鱗みたいな感覚に何度も襲われました。学生時代、油井さんは自身の専門ではないが社会学を必死に勉強されたそうで、「ジャズの歴史物語」があれだけ刺激的なのはその社会学の方法が適用されているということも、その理由であることは間違いないと思います。(ダルドという学者の「模倣の法則」に特に影響を受けたらしい。)まだの方、ぜひ読んでみてください。


ジャズの歴史物語 油井正一

ジャズの歴史物語 油井正一


 そしてなにより、かなりのインテリかつ権威であるはずなのにスノッブ臭や権威主義がなく、あるいは提灯記事のような腐った世界からもしっかり一線を引き、常に「大衆」に目を向けジャズの啓蒙を実践していったというその実績は、本当に唯一無比な存在だと思います。

 6月7日当日は、スィングジャーナルなどでの油井さんの優れたアルバム・レビューも持参して、そのアルバムもかけたりできたらな、と個人的に思っております。
 音楽ファンのみなさん、ぜひお気軽にいらしてください!