中央線ジャズ

 まったく僭越ながら自分も執筆させていただいた「中央線ジャズ決定盤101〜極私的こだわりジャズ・ディスク・ガイド〜」(音楽出版社刊・CDジャーナル・ムック)。今週ついにめでたく発売され、初めて現物を手にとり中身を読むことができた。第一印象としては、ずばり濃い。

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 山下洋輔高柳昌行、森山威男、武田和命、渋谷毅峰厚介坂田明本田竹広板橋文夫古澤良治郎明田川荘之原田依幸林栄一梅津和時、片山広明、早川岳晴、鈴木勲、松風鉱一などなどが登場する、明田川荘之(=西荻窪アケタの店)による101枚の選盤は、東京の中央線沿線のライヴハウスから生まれたリアルで個性的なジャズの空気と歴史を見事に捉えているものだが、正直言ってしまえば大方の音楽ファンには(ジャズファンも含め)認知度が低い・有名じゃない作品ばかりだろうなとも思う。それに加え、そんなマイナーな作品について各レビュアーが、基本、主観むき出しで語るという流儀も、けっこうな異彩を放っている。つまりは、分からない人にとっては何のこっちゃという本であると思われる。人によっては引くというか端から興味を持たないというか。しかし、この本を読んだある人が、そうそう!そうなんだよって感想を言ってくれた。「ミュージシャンもアルバムも全然知らないものが多いけど、なんかこの人たちおもしろいことやってるなあ!という雰囲気はものすごく伝わってくる」。
 こういうとなんだが、伝えたいメッセージが明確にあるのだ。「音楽の楽しみかたは人それぞれですので、自由に選んで感じてください」という、正論でもあるが実際は何も言っていないのと同じになりかねないスタンスとはかけ離れた、強烈なポリシーを持った本だと思う。ジャズを「未来の人たちが過去を振り返った時納得できる、時代に媚びない音楽」(国立ノートランクス・村上寛)として捉えるからこその、一貫性と統一感がこの本にはある。
 101枚のうちけっこう聴いてるなーという方も、あるいは全く知らねーという方も、ぜひご一読していただければと思います。単なるディスクガイドには収まらない、熱と勢いが感じられるのでは、と思います。