この日の国立ノートランクスでの松風鉱一カルテットはライヴ録音。つまり昨年スタジオ・ウィーから出たアルバム「private notes」同様のシチュエーション。ステージおよびその周辺に設置されたマイクがなんだか仰々しく、その影響だろうか客席も妙に緊張した空気が漂うように思える。
 メンバーは、松風(sax)・加藤崇之(g)・水谷浩章(b)・外山明(ds)。
 先々週にこの店で聴いたときは、その力強く男気溢れる感覚に惚れ惚れさせられた外山明の演奏だが、今日はまた様相が違う。一筋縄ではいかないめまぐるしく変わる表情のドラミング。ジャズ的かどうなのかもこうなるとよく分からんが、とにかくこのカルテットのアヴァンギャルドな側面を一身に背負っているのが、外山のドラムだということは間違いない。とにかく目が離せない。
 そしてあらためて気付くのが、楽曲のポップさだ。ノートランクスの店主・村上さんはこのカルテットを指して、“60年代末のロイド・カルテットを彷彿させる”とかつて表現していたが、そんなジャズロック的な猥雑さに加えて、日本人的なコブシが全開なのがよい。前述の尖がった外山のドラムとスタイリッシュでクールな水谷浩章のベースがその情緒を相対化しようとするが、加藤崇之のギターはさらに曲を泣きの方に持っていこうとする。その引っ張り合いを巧くリードしまとめあげる松風のセンスがおもしろい。