その後、新宿ピットインのMOTIF行くかなとも一瞬迷ったが、上野に板橋文夫を聴きに。GH9という店で、トリオによる演奏。メンバーは、板橋(p)、立花泰彦(b)、村上寛(ds)。
 カウンターに囲まれたそれほど大きくないスペースで、リズム隊に背中を見られながら窮屈そうにグランドピアノに向かう板橋。まず弾き始めたのは、ブルース。重厚感のあるスウィングに一発目からやられる。
 セットリストは、先月の吉祥寺・赤いカラスとほぼ似た感じ。トリオでやるときはそうなのか、それともここ最近の傾向なのかは分からないが、例えばいろんな国の民謡やあるいはフリー系の音はあまりなく、比較的オーセンティックなジャズが演奏されていた。それは、70年代の板橋文夫を最近好んで聴いている自分の耳には非常にシンクロする展開でもある。
 クライマックスのひとつは、ファーストセット最後に演奏された、“アリゲーター・ダンス”。渋谷ジャズ維新編「WATARASE」でも取り上げられたお馴染みの曲だ。ダーン!ダン・ダーン!と豪快に叩かれるテーマ、その後の力強いアドリブに煽られ上体がググッと揺り動く。とっても男臭くて、かっこいいっす。
 セカンドセットでは、ソウル・ジャズ風のリフが印象的なこれまた泥臭い雰囲気のバラードが素晴らしかった。間(ま)がもの凄く良い。
 店行く前に寄ったディスクユニオンでさんざん売り出されていたヨーロピアン・ピアノトリオがいくら束になっても決してかなわない強靭さ。そして心の奥の方を思いっきり揺さぶる熱さ。50代半ばのおっさんのその妥協なき姿勢には、いつもほんと勇気づけられる。