新宿から大江戸線で六本木に。スイート・ベイジルで、6日連続のイベント「JAZZ TODAY2005」を聴くため。3日目にあたる今夜は、最新フレンチジャズというテーマらしい。 
 →http://www.ewe.co.jp/jazztoday2005/19/19.html
 8時ちょうどぐらいに到着したら、もうボヤンZのピアノソロがほとんど終わるところだった。店の雰囲気に合わせてなのか、もともとこういうタイプなのか、わりあいと耳心地のよい流暢なピアノに終始していたように思う。後にあるメインのバンドに向けての肩ならしといった様相。
 2杯目のビールを飲みながら休憩中のステージの方をボーっと眺めていると、設置されたでかいスクリーンには菊地成孔の姿が。このイベントの初日のライヴ映像なのかな、だったらこれあれかそのうちDVDでも出るんだろうなとか、適当に考えていた。
 8時45分過ぎ、機材のセッティングがようやく終わり、5人のメンバーがステージに揃った。サックス、ギター、ウッドベース、ドラム、フェンダーローズ。オーソドックスなエレクトリック編成。
 サンプラーかCDJか遠目にはよく分からなかったが、真ん中でサックスを吹いてるリーダーのジュリアン・ロウがときおり手元で何かをいじっていて、そこから打ち込み系のダンスビートやらダビーな音空間やらが放出される。彼のテナーサックスはエフェクトがかかり様々な音色を聴かせるのだが、全体としてはなんだかフニャフニャ・ノッペリした感触。ワイルドな風貌のわりに、音はいたってソフト。もっと煽動してほしい!そんな不満がないこともない。
 もう一人のフロントのギター、そしてドラムにも同様の印象を持った。毒がないというか、あるいはフュージョン的とでも言ったらいいだろうか、かっちりしたリズムと予定調和なアレンジとフレーズは正直スリルに欠ける。
 いわゆるクラブジャズやフューチャージャズというスタイルを巧くなぞっている、そんなふうに捉えられてもおかしくない音像だ。一見するとどぎつそうだが、本質は無難・安心なサウンド
 「結局、俺ととしさんはビバップが好きなんだよね!この前のめりになる感じが」。ジャズを通じて知り合った初めての友人が以前僕に語った言葉が、なぜか頭の中を駆け巡る。そう、前のめりで性急で衝動的な表現。自分が求めているのはそういったものだ。どんなジャンルであろうが、それを感じられなければ聴く価値はない。
 状況が少し変わったのが、後半、ボランZのフェンダーローズがぎこちなくつんのめりながら、アグレッシヴなグルーヴを紡ぎたした瞬間。うわ、かっこいいよ!ウッドベースとこのフェンダーローズだけでいいかも。一瞬だがそんな突き抜けた感覚を覚えた。