知りすぎた、私

 この前の連休での帰省中に鶴見俊輔の本を読んでいたら、その中で「三島由紀夫vs東大全共闘―1969-2000」のことが触れられていた。全共闘の浮っついたそれと比較しての三島の言葉の重さについて鶴見が評価していたのがおもしろくて、東京戻ってきて早速買おうと考え本屋に寄ったが予想どおり見つからない。しょうがないんで店内をぶらぶらしていたところ、うん!?と目を引く一冊を発見。前・新日本プロレス社長・草間政一の「知りすぎた、私」。
知りすぎた、私
 現在の借金5億円と報道されたり(それ暴露したのも草間氏だな)、いきなり長州力が現場監督に復帰したりとまさに崩壊へまっしぐらの感が強い新日本だけど、この「知りすぎた〜」読むとその内実がかなりよく理解できる。もちろんいろんな事実関係については氏の主張だけを鵜呑みにはできないとしても、「プロレス経営本・経営指南書」としての客観的でリアリティのある内容が新鮮だ。
 そもそも、それまでの3年間赤字決算続きだった新日本プロレスという会社が、草間氏が社長だった昨年度は黒字に転換したという事実が、この本を説得力あるものにしているということは間違いない。大体さあ、去年の新日といえば、もう観客動員はひどいし(ドームとか)、テレビ中継の時間は1時間から30分に縮小されるし、プライドなんかに比べてもあきらかに存在感薄いしなあ、これは終わっていくんだろうなあという匂いがプンプンだったもんな。まあ今もだけど。しかし、そういう表面には見えないところで、実は経営の体質が収益のちゃんと出る方向に堅実に改善されていたっていうのが、意外だった。草間氏を実質追放したアントニオ猪木さえいなければ、会社としての新日は案外と安定路線に乗っていたのかもしれない。
 雑誌とテレビとネットで接するだけの自分なんかは、決してちゃんとしたプロレスファンとは言えない。ただ、企業としてのそういう堅実な路線がイコールおもしろいプロレスというふうには正直つながらないなあというのは実感として思ったりする。というか、このまま猪木がめちゃくちゃにして、新日本が倒産とかなっちゃえば最高だなと思ってるぐらいで。