マラビー、田中

 休み。明日からのためのもろもろの準備や、その他の雑務などを家で行なう。夜は駅前まで出かけ飲んで、また歩いて帰ってきた。
 家で聴いたCDでは、トニー・マラビーの「Tone Collector」と田中信正の「mummy’s dance」が圧倒的だった。
 前者のマラビーの最新作は素晴らしい。ハッとするようなフリークトーンがギャゴーーン!!とものすごいインパクトで一曲目から鳴り響く。その冗長性ゼロの勢いと、これこそテナーという音のでかさとぶっとさが、この人のジャズマンとしての個性を一発で表している。一ミリも胸に届かない癒し系音楽や観念的フリー音楽とはまったく無縁。凶暴な音であると同時に、ジャズ的な歌ごころがある。
 今月出たコンピ「スリー・ブラインド・マイス」ライナーのインタビューの中で、TBM藤井社長の現在注目しているミュージシャンのひとりとして名が挙げられていた田中信正。今日自分が聴いていたのは、2年前に出た彼のピアノ・ソロ。独特なリズム感覚に基づいたフレーズの構築に思いっきりはまる。パワーで持っていくフリージャズのピアノも自分は好きだが、田中の音を聴いて自分の中にわき起きる不思議で熱い感覚は、ちょっと特別なものだ。
 70年代の山下洋輔や武田和命がいなくても、自分の時代には田中やマラビーがいる。そんなことを強く思った。