この日のノートラのライヴは、五十嵐一生トリオ。メンバーは、五十嵐一生(tp)、グレッグ・リー(elb)、本田珠也(ds)。
 3月ノートラでの吉澤はじめとのデュオでは、エレクトリックでフリーな、混沌とギラギラ・ドロドロの濃い音楽を聴かせてくれた五十嵐一生。その前はフリージャズ・ベースの大御所・井野信義とのデュオだったし、今回はどんな音楽なんだろう?というかなりの期待を持ってライヴに臨む。特に、今夜は本田珠也がドラムだ。一昨日のピットインZEKトリオでのものすごいドラムがまだ耳から離れていない中で、しかもエレクトリックな展開も考えられるのだから、期待しないわけにいかない。
 さて、演奏が始まってまず意外だったのが、前回は積極的に使用されていたサンプラーなどの機材が今回はかなり少なめだということ。アンプを通してはいるものの五十嵐一生のトランペットも、比較的クリアーなトーンの音色。グレッグの6弦エレベは、どこかモワッとした音で、フレーズを黙々と刻む。本田さんのドラムもそれこそ一昨日のZEKのようにはぶっ飛ばさず、安定したグルーヴという印象だ。
 そう、全体的にいわゆるファンキーなサウンドだが、どぎつくない音像。エレクトリックに関してはゴリゴリ・バキバキ感・それと毒を求める幼稚な自分の耳には、この辺りの流儀はどうも正直ピンとこない。このベースがもし井野さんだったら、もっとフリー寄りに行くのかなあとかボーっと考えながら聴く。
 ・・・そんな自分にとっての膠着状態が破られたのが、本田珠也の超高速でしかも鳴りがもうばかでかいドラム・ソロから始まったファースト・ステージ・ラストの曲で。
 聴いていて、「なんじゃこりゃ、すげえ・・」という言葉しか頭に思い浮かばない。一気に興奮する、ほんと惚れ惚れするドラムだ。グレッグさんのベースが絡みつき、テンションがますます上がる。これこそ生身のエレクトリック・ファンク・ジャズだよお、とかそんな意味不明な言葉を吐きたくなる。そして、五十嵐さんのトランペットが切り裂くようにその音の中に入ってきた瞬間!この日のライヴ、自分にとってのピークだった。