本当は今日はユニオンに寄る気もなく、買う気もなかったのだが、結局3枚購入。①マイルス「アガルタ」、②アントニオ・カルロス・ジョビンイパネマの娘」、③矢野絢子「ナイルの一滴」。
①②はいいとして、③は普段あまり手を出さないジャンルの作品。実は去年、友部正人を追っかけて四国に行ったときに、高知の「歌小屋の2階」というライヴハウスで友部さんの前座を彼女が務めていたのを聴いたことがある。ピアノ弾き語りを基本としたどこか捻じ曲がったというかインパクトのあるオリジナル曲とステージで、へぇー!なんて思ってた。
今年の夏「ウチくる!?」のエンディングテーマで彼女の曲が使われていて、エッ!?と驚いた。それは、メジャーデビューしたんだ!ということよりも、楽曲のイメージが変わってるなあ随分、ということへの驚き。サウンドを洗練させようとしたことで、毒気が抜けて全く凡庸になってしまったという感じで。メジャーになって良いところを薄められてしまったという古典的な失敗に陥ったのかなあ、ああ・・・という(古典的な)ネガティヴな気持ちが沸き起こった。しかし、その「ウチくる!?」にしてもわずか何十秒の音しか流していないわけで、自分でちゃんと確認してみようと思い、購入したのだ。
で、実際聴いた感想だが、去年「歌小屋の2階」でも聴いた変な曲も収録されているが、なんだろう基本はどこか70年代フォーク的なものが前面に出ているような。
好みで言ったら、個人的にはその辺うーんという部分も正直あるが、1曲目「てろてろ」の叙情性は、30のおっさんが言うのはあれだが、グッときた。

僕よりは大きなこの町の/固い道の上をてろてろ自転車で/時々パンクもするよ/一日に何回も同じ道を通って/夜には泣きそうになっても  (「てろてろ」:矢野絢子

この切ない詩を丁寧に唄いあげる矢野さんの歌唱も印象的。この曲は、ピアノとヴァイオリンだけの構成。ヴァイオリンは金子飛鳥さんで、金子さんは僕にとっては真島昌利の「夏のぬけがら」の人。グッときたのは「てろてろ」で表現された矢野さんの世界に、マーシーのあの名作との共通性を少し感じたからなのかもしれない。