午後7時近くに中央線に乗って、西荻窪に向かう。クロップクロップというライヴハウス酒井泰三(g)トリオの演奏を聴く。今日は、上村勝正(b)、福島紀明(ds)というパーソネル。
さっきのフューチャー・ジャズの話じゃないけど、泰三さんもジャンルとしては、ジャズ系とかロック系とかノイズ・アヴァンギャルド系とかちょっと分けられないタイプのミュージシャンだ。プロとしての出自が古澤良治郎さんや近藤等則さんだということやまたその後の活動を見ると、広い意味でジャズ界の人と言ってもいいとは思うんだけど、今日はニール・ヤングの「サザンマン」をわりとストレートに演っていたりもして。
まあ、ジャンル分けなんて意味ないじゃんって確かにそのとおりなんだが、例えばもし誰かに「酒井泰三ってどんな感じの音なの?」と聞かれたとしたら、なんと答えるだろうか。自分の狭い知識のなかで分かりやすく伝えるために「昔のグランジとかオルタナとかそういうイメージに近いかな、あとバンド・オブ・ジプシーズの頃の後期ジミヘンとか」、そんなことを言うかもなあ。ただ今日ライヴ聴いていてあらためて確信したことがある。ひとつは予定調和の盛り上がりをまず彼の音楽は否定しているということ。そしてもうひとつは、音楽とは無関係な心理的な陶酔を本質とするエセ前衛的なものを否定していること。
・・・って、まあ観念的なたわごとはこれぐらいにして雑多な感想を書きたい。今回のトリオ全体の音について言うと、例えば「轟音」なんかと比べると泰三色が相当に強かった。特に1ステージ「レフト・アローン」での後半のギター・ソロはかなりきていて、マーシャルのアンプから出てくるものすごく歪んだものすごくでかい音が、強くしなやかな芯を持っていることでこちらの脳を絶妙に掴んでしまう。歪みとでかさは当然として、この芯の部分って泰三さんのギターで僕がもっともツボの部分だったりもする。ギターや楽器の知識がないんで、どうしても意味不明になるが、以前も書いた中音域と低音域の話にもなるんだな、結局。「ゲット・アップ・スタンド・アップ」の冒頭でのコード・ストロークの音も同じ意味でかなり掴まれた。
それと、最後の曲。あれさあ、もう立ち上がって踊りだしちゃったほう良かったよなあ。スタンディングで会場が暗ければ、要するにクラブっぽい雰囲気だったら絶対行ったんだけど、まわりの目が気になってできませんでしたわ。