26日(土)。西荻クラップクラップで酒井泰三後藤まさるデュオ。後藤まさるさんって、実は全然今まで知らなかった。ケミストリーといっしょにやったりもしてるらしい。
この日のライブ全体の大雑把な印象としては、泰三さんの爆音ギターと後藤さんのアグレッシヴなパーカッションがファンキーにグルーヴィに絡み合い展開していったという、ありきたりな言い方だが、そんな感じ。しかし、あいだには、ロックンロールや歌ものバラード(後藤さん作)ありといつもの泰三さんのステージとはけっこう違った部分も聴けて楽しめた。
「爆音ギター」なんて簡単な言葉を使ったが、酒井泰三というギタリストの音について語るときに、この「爆音」や「轟音」という種類の言葉が欠かせないということは言うまでもなく、彼の愛用するギター「弁天」とマーシャルのアンプから飛び出してくるすさまじくでかい音量を伴ったフレージング、それは、ちょっとしたジャズのライブハウスでは敬遠されてしまってもおかしくないほどの強烈なものだ。実際僕も昨年初めて彼の演奏を聴いたときはその鳴りの「でかさ」のインパクトにやられた。
違和感も含めた鮮烈なファースト・インパクト、そしてそれが一瞬にして快感になっていくこの感じというのは、音楽性は全く違うが、例えばセロニアス・モンクが叩く不協和音のブロックコード、リョウ・アライによるDJプレミアの現代発展的ビート、あるいはベーシック・チャンネルのディープなディレイなんかを最初に聴いたときと通ずる感覚だ。はっきりした個性、そして、つかみとして分かりやすいダイレクトな表現とでも言えるだろうか。しかし、それらのミュージシャンの表現がインパクト一点勝負ではない素晴らしく深い音楽であるように、泰三さんの弾くギターにも爆音という言葉(イメージ)の裏に、豊かな音楽が鳴っている。
この日特にそれを思ったのが、1セットめでの「アフリカ」という(絶対そんなタイトルじゃないと思うが適当に)曲。後藤さんのシンコペーションポリリズム全開のパーカッションの上に、ファンクやハードロック的フレーズを意識的に排除したアジア的(?)な不思議な旋律のギターのリフが乗っかる。すごくスピリッチュアルだった。多国籍なのか無国籍なのかよく分からないが、「スナカゼ」なんかもそうだけど、泰三さんのこういう曲って僕は好きだ。