その後はCDをひたすら聴く。
①Dave Douglas「The Infinite」、②Chris Potter Quartet & Jazzpar Septet「This Will Be - The Jazzpar Prize 2000」、③Dave Holland QuintetPrime Directive」、④Charles McPherson Quartet「But Beautiful」、⑤林栄一「Mazuru」、⑥田村夏樹「Song For Jyaki」、⑦ハイロウズの新譜シングル、⑧Matthew Shipp「equilibrium」と、そんなところを聴いた。
①②③でクリス・ポッターが吹いていて、狙ったわけではないがちょっとしたポッター特集になってしまった。サックスプレイヤーは同じでも、楽曲内容としては3作とも全く個性が違う。①はここ数日とても好きで聴いてるんだが、雰囲気的にはマイルス60年代黄金クインテット後期〜ビッチェズ・ブリューのいい部分が凝縮されたとでも言えるだろうか。フェンダーローズとベースそして躍動的で爆裂しているドラムがつくる厚く重い音の上に、ストイックで緊張感があるトランペットとテナーの絡みが乗っかる。手をつけられないテンションと完成度にすごく聴き入ってしまう。
で、ポッターのサックスということで言えば、彼のリーダー作の②が良い。ライヴ盤ならではというか、彼のテナーのノリが異常に良くて、盛り上がる。③は僕が抱くECMのイメージとはちょっと違う、ラテンっぽいというか、そういう明るく軽快なとっつきやすい感じ。しかし、さらっと通り過ぎてはいかず何かひっかかる変な音だ。どこかのん気なトロンボーンマリンバ、そしてリーダーのデイブ・ホーランドのベース(ソロ長いけど、全然飽きない)が特におもしろい。
この間出た怪作「コココケ」よりも5年以上前につくられていた田村さんのトランペットソロ作品⑥の非常にディープな雰囲気、オーネットよりも何倍も荒々しく魂の入った林さんのかつてのグループ・マズルの名演⑤と、なんか蒸し暑い夕方がさらに暑くなる。
久々に引っ張り出したサースティ・イヤーの⑧が以前聴いたときよりもなぜか急に良く聴こえたり、自分の耳も変化してるなあと思ったりしたが、なんだかんだ言って④の素晴らしい演奏に心を奪われた。パーカー死んで50年経ってるのに、今さら「パーカー・スタイルの語法」云々もないのだが、このアルトのフィーリングはパーカー好きにはやはり堪らない。聴くたびに良さが染み込んで来る。寺島靖国氏が先月のSJでこのアルバムを絶賛していたが、そこで彼が書いていた以下の言葉がいかにも寺島氏らしくておもしろかった。「ひっきょうするにアルトはチャーリー・パーカー、そしてジョニー・ホッジズ、二つの吹き方しかないのだ。」いいこと言うなあ。
最後にハイロウズの新作。中学生でブルーハーツに出会って以来、ある意味腐れ縁的にヒロトマーシーの歌を今まで聴いてきているが、今回のマーシーが歌う曲「64,928」は最近の中でもかなりの傑作と言えるのではないだろうか。そう言ってしまうとあまりに単純化された表現で好きではないが、社会派モードのマーシーの詩と声がリアルでそして切ない。

世界中ヒロシマになり/空がすっかりこわれても/オレは路上を歩いてく/いつもと変わらぬ歩幅で(64,928 〜キャサディ・キャサディ〜:ハイロウズ