アート・ペッパー「光と影」

有休。3連休の最終日だ。明日仕事めんどくさいな。午前中はミュージックマガジンを読んだりCDを聴いたり。
昼飯を食べながら、昨日買ったアート・ペッパーのビデオ「光と影」を観る。このドキュメンタリーはペッパーの亡くなった1982年に発表された。もしかしたら追悼作なのかもしれない。ネットで検索してもそれに該当するものが見当たらないのだが、僕が中古で購入したこのビデオは、バップビデオの「ヴィンテージ・ジャズ・コレクション」のひとつとして90年に発売されたものらしい。原題は「NOTES FROM A JAZZ SURVIVOR」。
アルバム「ウィンター・ムーン」のことが後半で大きく触れられていることからも、ここでのペッパーのライヴ映像やインタビューはまさに彼の晩年、亡くなる1〜2年前ぐらいに撮られたものだろう。初っ端から自分とドラッグの出会いについてペッパーが回想するシーンから始まる。45分ぐらいの長さの作品なんだけど、その間に彼が喋っている内容の半分以上は自らのドラッグ中毒のこと。それを乗り越えて「今はもうやってない」と述べているが、そのかわり異様にくたびれきっている。50代後半とは思えない外見と身体の衰えよう。腹の手術のあとがまた痛々しい。「一日中ベッドの上で座っているときもある」なんてことも言ってる。しかし一転してライヴ(カルテットで)のときの彼のオーラはすごい。全身の力がほんとに演奏のために集められているということがよく分かる。アルトの音もフリーキーでエモーショナルだったりもする。観ていて燃えるわ。
「もし俺が強盗だとしてそこで拳銃を持たされたらちょっとのきっかけでそれをぶっ放すだろう。しかも楽しみながら。なぜなら俺は憎悪に満ちているからだ。おかしなものだけど憎悪と美は非常に近いんだ。」「人はひどい不幸にどうしても耐えられなそうにないときにただひとつ支えを求める。『ブルース』とはその支えなんだ。」まさに本物のジャズメンと言ったアウトロー的・芸術家的発言にもけっこうグッときた。癒しとかファッションとかとは無縁の、人生を賭けた音が晩年のペッパーでは聴ける。
特に後半でペッパー自身「これをつくるのに55年かかったんだ。これ以上のことはできない。最高作で最重要作」とまで言い切っている「our songs」。この曲が収録されたアルバム「ウィンター・ムーン」はほんとに素晴らしい。また、ペッパーと妻がその曲に2人で聴き入る場面はこのドキュメンタリー中、最も感動的なシーンである。
そういえばペッパー、「女房を守るためなら殺しもやる」ってサラッと普通の顔で言ってる場面があって、それがまた変な説得力があった。やっぱぜったいカタギじゃないわ。
夜は荻窪グッドマンへライヴを観に行った。
いま気づいたが、このビデオのジャケットをケースから抜き出すと、ジャケット裏側にびっしりと解説が書いてるではないか。あとでよく読んでみよう。